時を馳せる恋日記 3

03-04 宣言 ページ4

◆ 2004.12.13 / 12:25PM ◆

・・《A》・・

あと10分ほどで家に着く。

宇宙人は私の肩に頭を乗せたまま寝息を立てている。

その寝息が息苦しそうで、聞いているこっちまで息苦しくて咳払いをしたくなってしまうほどだ。

実は今、寝ている事を良い事に、宇宙人の頭にこっそりと自分の頭を寄り添わせてみたりしている。

可愛い事は一切言えないけれど、私にだって少し触れていたいっていう可愛い乙女心はあるのよ。

通常時よりもﾄﾞｷﾄﾞｷと高鳴る心音を感じていると余計に緊張するのに、余計に宇宙人を好きになって行く感覚に陥り、思わず溜め息をついた。

ﾄﾞｷﾄﾞｷを押さえ込むためと、脳が感じてるｽﾄﾚｽを吐き出すためにだ。

宇宙人を好きな事に、未だ困惑気味の私。

だって、この人ってば本当に得体の知れない人なのよ？そもそも人かすら…定かではないのに。

こんな事よそ様に人に言えない。頭がおかしいと思われる。

もう一度溜め息をついた時『おねぇちゃんも彼氏と一緒で体調が悪いのかい？』と、突然ﾀｸｼｰの運転手に話し掛けられた。

慌てて宇宙人から頭を離す。

『いえ、大丈夫です！それにこの人は彼氏じゃないですから！』

『おや？そうなのかぁ。じゃぁ、好きな人かい？』

んなっ！こんのおっさんめ！そういう恥ずかしくなっちゃう様なこと聞いて来ないでよ！

ｲﾗｯとしてﾊﾞｯｸﾐﾗｰを見ると運転手とﾐﾗｰ越しに目が合った。

目尻には皺がいっぱいあって、きっとこの人は優しい顔で笑うんだろうなと思った。

『・・・はい。私この人が好きなんです。でもおじさん！内緒ですからね！誰にも言っちゃダメですよ！』

いや、こんな事を言い触らしてもおじさんに何の得もないけどとは思いながらも、凄く恥ずかしい。

宇宙人が起きてなくて本当に良かったよ。

恥ずかしさのあまり片方の手で頬を押さえると、おじさんが笑った。

ﾊﾞｯｸﾐﾗｰに映ったおじさんは、やっぱり優しい顔をしていた。

応援してるからねと言ってくれた優しいおじさんに、小さな声で返事をする。

言葉にすると余計だった。

頭で考えた事を声に出して、耳からまた身体の中に戻すという行為は頭だけに留まらず体中に広がる様だ。

これはあれだ。もう止まらない気がする。

だって無意識で“好きなんです”って宣言しちゃったしね。

“みたい”でも“かも知れない”じゃない。

私はまた宇宙人の頭に自分の頭を寄せる。“好き”って言葉はなかなか出せないだろうから。

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