８ 地下牢 ページ10
「っ、うぅ…」
目が覚める。
と同時に感じた鋭い頭痛に、私は顔をしかめた。
トントンから食らった腹への拳が、まだジンジンと形を残して存在を訴えている。
ここは、地下牢か。
冷たい壁に背を預け、はめられた手枷と足枷を睨む。
このまま拷問されるか、殺されるかは分からないが、この状況が良くないことは確かだ。
こうなってしまった時は、黙って何もしないのが一番だ。
じっと堪え忍ぶ。
何を訊かれようとも、言われようとも。
例え口を開かずに餓死したとても、祖国の情報を守ることができたら、胸を張って冥土の未知を歩けるのだ。
「…お、目ぇ覚めとるやん」
「……」
「おはよー。俺、シャオロンって言うねんけど、君、名前は？」
ニット帽の青年、シャオロンが鉄格子の向こうから話しかけてくる。
わざわざ座っている私に視線の高さを合わせ、友好的に見せる演出までつけて、何をしたいんだ。
手枷がなかったら、今すぐにその喉を引き裂いてやるのに。
私は表情を変えずに、ただシャオロンを睨んだ。
「そんな顔せんといてよ、怖いって」
「……」
「俺ら、君と敵対する気はないよ。
どっちかと言うと、こっちの陣営に入って欲しい感じやねん」
シャオロンが穏やかに笑い、私を見つめる。
寝返りは恥。
そんな要望、簡単に答えられる訳がない。
首を振ることもなく、私は黙ったままでそれを返事とした。
「……」
「マンちゃん居らんと会話にならんわ…。
なぁ、ほんまに、マジで、ちょっとだけでええから喋ってやぁ…」
捨てられた子犬のような、と表現するには目の奥が腹黒いが、彼はそんな顔で私の顔色を伺ってくる。
絶対に表情ひとつ動かさない私に、シャオロンはずっと困ったようなため息を漏らしていた。
早くどっか行け。帰れ。犬。
頭で何度もそう唱えながら、彼に視線でその想いを伝える。
「…そうや、ご飯、持ってきてん。食べてな？
ひとらんの畑から収穫してきたご飯やから、美味しいで」
「……」
「食べへんかったら、鼻摘まんで突っ込むからな！」
鉄格子の小窓から、そっとプレートが差し込まれる。
牢屋の住人に食わせるには豪華すぎるその食事に、私を仲間にするという計画の本気度が伺えた。
シャオロンはこれ以上話しかける意味はないと判断したらしく、軽く手を振って去っていく。
彼の姿が見えなくなったと同時に、私は小窓のプレートへと手をかけた。
毒でも入っていてほしかったのに、その飯は全てめちゃくちゃ美味しかった。
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みょん - 夢主ちゃん五感を消すどころか操っちゃった (2019年8月26日 15時) (
レス) id: 58ac6e7e16 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - ひよっ子さん» ご感想ありがとうございます！頑張ります！ (2019年3月17日 19時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
ひよっ子 - 主人公ちゃんの悲しい過去など とりあえず全部面白いです これからも頑張ってください！！(≧∀≦) (2019年3月17日 18時) (レス) id: a20f220c99 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - 兎危@ファンマークは子兎さん» チノ氏のキャラがまだ定まってないので探り探りですが…。これからも結構登場させるつもりです。 (2019年3月17日 9時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
兎危@ファンマークは子兎 - ち、チノ氏…！？！？まさか、チノ氏を書いてる人が居たなんて……！感激ですううううう(新人組推し) (2019年3月17日 9時) (レス) id: 029d2a2f18 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：フール | 作成日時：2019年3月15日 17時
