７ 同じ夢 ページ9
夢を見る。
何度も何度も、繰り返し繰り返し、同じ夢。
私の大好きだった祖国で、兄貴と一緒に草原を駆ける夢。
涙が零れそうなほど、綺麗な景色。
草原の花が一斉に開花し、柔らかな風が香りを運ぶ。
こんなに美しいのに、なんで私はその景色を鈍色に染めてしまうんだろう。
戦場のにおいと風のせいで、草原は汚く姿を変えてしまった。
その景色に手を伸ばしても、私の腕は短すぎて届かない。
自分の無力さを嘆いて、再び視界が落ちていく。
そんな夢を何度も見る。
何度も何度も、繰り返し繰り返し、同じ夢。
帰りたい。
誰か助けて。
「……大丈夫。現状、特に問題はないかな」
「そうか。よかったわ」
「うーん、まさかあんな捨て身の技を使うなんてなぁ」
「すまんな、しんぺい神。何回も働かせて」
「全然いーよ。これが俺の仕事だから」
淡い光が視界の端に入り込む。
目が覚めると、私は医務室のような場所で寝ていて、しんぺい神と呼ばれた青年から柔らかな温かい力を受け取っていた。
寝ぼけた私は、一瞬その力を兄貴のものかと思い手を伸ばしたが、すぐに意識を戻してベッドから飛び起きた。
「っし、ね…！」
「うわっ！？助けてトントン！」
「えーりんみたいに言わんといて」
武器すら持たずに重力を発生させた私の手を、トントンとかいう奴が掴んだ。
書記長。グルッペンの次に実力と権力を持つ男。
私はすぐにその手を振り払い、彼の足元を払った。
上手く体制を崩してくれたトントンは、赤いマフラーに口まで顔を埋め、冷気を放って私の追撃を防ぐ。
そして、体術で戦おうとする私の手を掴み、軽々とベッドに背負い投げた。
「いっ…！」
「痛そうやなぁ…」
「まだやるか？相手したるで」
「まだ、まだッ…！」
私はすぐに身を起こし、トントンへと殴りかかる。
腕で防がれているが、構わずに蹴りを繰り返し、医務室にあった刃物やら注射器やらを手に触れたものから武器にして、攻撃を続けた。
だが、トントンは全て腕を動かすだけで攻撃を防ぎ、クルリと体を回転させて注射器を避けていく。
その避けた回転の力で、私の顔に裏拳を叩き込んできた。
ふっと意識が揺らぐ。
「顔、狙うなんて、さいってー…っ」
「あ、すまん！」
「…童貞やからな、トントン」
「黙れ！」
しんぺい神がトントンとじゃれている間に、私は重力弾を放つ。
だが、その弾はトントンにあっさり防がれてしまった。
その瞬間。
私の腹に、深い一撃が落とされた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 247人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みょん - 夢主ちゃん五感を消すどころか操っちゃった (2019年8月26日 15時) (
レス) id: 58ac6e7e16 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - ひよっ子さん» ご感想ありがとうございます！頑張ります！ (2019年3月17日 19時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
ひよっ子 - 主人公ちゃんの悲しい過去など とりあえず全部面白いです これからも頑張ってください！！(≧∀≦) (2019年3月17日 18時) (レス) id: a20f220c99 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - 兎危@ファンマークは子兎さん» チノ氏のキャラがまだ定まってないので探り探りですが…。これからも結構登場させるつもりです。 (2019年3月17日 9時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
兎危@ファンマークは子兎 - ち、チノ氏…！？！？まさか、チノ氏を書いてる人が居たなんて……！感激ですううううう(新人組推し) (2019年3月17日 9時) (レス) id: 029d2a2f18 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：フール | 作成日時：2019年3月15日 17時
