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35 さいってー ※オリキャラのみ ページ37

「…ちょっと、入ってこないでよ」
「ええやん。久し振りやし」


その日の夜、私の部屋に無断で入ってきたリョウさんの手には、指輪がはめられていた。
ランドールを潰すまでという期間付きで、契約を交わしたのだ。

…私と兄貴と自分の三人で世界を回るため。

私がまだ四歳ぐらいの時に冗談のように言っていた夢だ。
本当に懐かしい。
まだ覚えていたリョウさんにも驚いたが、その夢を心の隅で待ち遠しく思っていた私自身に一番驚いた。
世界を回るなんて子供みたいなこと、誰がこの歳でやりたいと思うのだろうか。
私はもう十代後半だし、リョウさんだって………あれ?リョウさん、何歳だ?


「…何年ぶりや、こうして話すの」
「十年ぶりよ」
「そうか、俺が今28歳やもんな」
「は?」
「ん?」
「サバ読まないで頂戴」
「いやいや、俺28やで」
「はぁあ?貴方45でしょ」
「んな訳ないやろ!
 お前拾ったんが13の時で、結婚したのが16、お前と離れたのが18や!」


え、うそ、どういうこと?
そんな若いのコイツ。
いや、45にしては顔幼いなーとは思ってたけど、えぇ?
私を拾ったのが13って、どういう精神してるの。


「兄貴は?」
「今、26ぐらいかな」
「え?……兄貴、タバコ何歳から吸ってるの」
「10からは確実に吸っとったな」
「犯罪!」
「そんなこと言ったら、お前やって四歳の時、酒飲んだやん」
「え?」
「覚えてへんやろ」


リョウさんがドヤ顔で私を見下ろしてくる。
私はそのウザイ顔を力無く張って、頭を抱えた。
そうか、兄貴、26なのか…。
私のこと、覚えてくれてるかすら危ういなぁ。


「…でも、安心したわ。Aの顔見れて」
「そうね」


急に話題を変えたリョウさんは、私の頭に手を置いてきた。
何よコイツ、急に親みたいな態度して。
私はその手を振り払おうとしたが、リョウさんの真剣な顔を見て、出来なくなってしまった。


「…ずっと一人やったんやろ」
「まぁ、そりゃあね。貴方達が勝手にどっか行くから」
「……頑張ったな。こんなに、傷ばっか作って…」
「何よ、気持ち悪い」
「ずっとツラかったやろ。…助けられんくて、何もできんくて、本当にごめん…」


私のことを殺そうとしといて、何言ってるの。
口臭いのよ、あんた。
そんな軽口は叩けなかった。
やっと出会えた心を許せる人に、私はただ涙を堪えることしかできなかった。


「謝らないでよ」
「…すまん」
「っ、女の子を泣かせるなんて、さいってー…!」




 

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みょん - 夢主ちゃん五感を消すどころか操っちゃった (2019年8月26日 15時) (レス) id: 58ac6e7e16 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - ひよっ子さん» ご感想ありがとうございます!頑張ります! (2019年3月17日 19時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
ひよっ子 - 主人公ちゃんの悲しい過去など とりあえず全部面白いです これからも頑張ってください!!(≧∀≦) (2019年3月17日 18時) (レス) id: a20f220c99 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - 兎危@ファンマークは子兎さん» チノ氏のキャラがまだ定まってないので探り探りですが…。これからも結構登場させるつもりです。 (2019年3月17日 9時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
兎危@ファンマークは子兎 - ち、チノ氏…!?!?まさか、チノ氏を書いてる人が居たなんて……!感激ですううううう(新人組推し) (2019年3月17日 9時) (レス) id: 029d2a2f18 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:フール | 作成日時:2019年3月15日 17時

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