１５ 過去の幻想 ページ17
「…本題やねんけど、俺らの仲間にならへん？」
「……寝返りは、恥よ」
「君自身が、祖国に裏切られてるのに？」
トントンが私をじっと見る。
…私だって、それぐらい分かっていた。
国に単身で乗り込ませて、全員殺せなかったら死刑なんて、始めから私を切り捨てるための仕事だ。
例え全員殺せたとしても、嘘をでっち上げて殺すつもりなんだろう。
救援もなし。報酬もなし。事前の偵察と情報もなし。
でも、私が仕事をしないと、国に捕らえられている兄貴が処刑される。
それに、私は本当に、祖国が大好きだった。
過去形になってしまうのがツラいのだが、それだけは本心だ。
だから、祖国のためになら死んでもよかった。
勝てるわけがない戦いに身を投じても。
私が大好きだった“あの姿”を祖国が取り戻してくれるのなら、喜んで死のう。
「分かってるわ。私が何のために貴方達の国に来たのかぐらい。
私は貴方達を倒すために、ここに向かわされたんじゃない。
死ぬためにここに来たのよ」
「分かってるなら、なんで…」
「祖国を愛しているからよ」
狂信でも何でも好きに言えばいい。
私は浴びせられるだろう罵声を想像し、それに耐えるための準備をした。
愚かな奴だってことは私自身が一番理解している。
それを罵られることは、全く苦ではない。
私は本当に、祖国を愛しているから。
「…愛しているのならば、何故立ち上がらない」
「…立ち上がる？」
突然、グルッペンが口を開いた。
何かスイッチでも入ったかのように、その目がギラギラと光る。
「お前ほどに国を愛する者を掃いて捨てる国が、お前の愛する祖国なのか？」
「…今は変わり果ててしまったけれど、あの国は確かに私が愛した国よ」
「変わり果ててしまったけれど？
納得いっていない部分があるんじゃないか。
ならば、何故立ち上がらない？」
「祖国のために死ねることは、喜びなの」
「変わり果ててしまった国をまだ祖国と言うのか…？
そんな国のために死ぬことを喜びと言うのか…！」
「ええそうよ！愚かなのは分かってるわ、けど…」
「そうだ！お前は誰よりも愚かだ！
本当は国に反抗したくて仕方がないのだろう？
レジスタンスになりたいのだろう…！
お前は自分の気持ちに嘘を吐いて、行動することから逃げているだけだ！
何故戦わない！」
「そんなこと…！」
「お前が愛したものはもう過去だ！
そんなもの、捨ててしまえ！
目の前を見ろ！
お前は、どうしたいんだ！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 247人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みょん - 夢主ちゃん五感を消すどころか操っちゃった (2019年8月26日 15時) (
レス) id: 58ac6e7e16 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - ひよっ子さん» ご感想ありがとうございます！頑張ります！ (2019年3月17日 19時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
ひよっ子 - 主人公ちゃんの悲しい過去など とりあえず全部面白いです これからも頑張ってください！！(≧∀≦) (2019年3月17日 18時) (レス) id: a20f220c99 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - 兎危@ファンマークは子兎さん» チノ氏のキャラがまだ定まってないので探り探りですが…。これからも結構登場させるつもりです。 (2019年3月17日 9時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
兎危@ファンマークは子兎 - ち、チノ氏…！？！？まさか、チノ氏を書いてる人が居たなんて……！感激ですううううう(新人組推し) (2019年3月17日 9時) (レス) id: 029d2a2f18 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：フール | 作成日時：2019年3月15日 17時
