真夜中、かくれんぼ (ページ2)

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学校から家に帰れば、リビングを見ないようにして部屋に戻る。ただいまもおかえりもなくなった家の中は怖いぐらい静かだけど、それも二ヶ月味わえば何とも思わなくなった。

最低限の会話すらなくなった家は本当に静か。

だから気づかれないように動くのは難しい。

携帯の画面に浮かんだ、10:57。

そろそろいいかもしれない。

わざと暗闇に溶け込むような黒のパーカーを羽織って、財布と携帯をポケットにつっこんだ。ドアノブをゆっくりと回していた廊下に出る、そのまま階段から一階を見下ろすと何も見えない。黒が空間を支配していた。

「寝てる、よね」

足音をたてないように階段を降りて、もう履き古したコンバースを急いで履く。見つかってはいけない。自分の中のルールは守らなくちゃいけない。無駄に言い争いしたくないから、ママとパパの顔をあまり見たくないから…理由は山ほどある。

「そんな立派なものじゃないか」

理由と言えば綺麗、本当は言い訳。

振り返ると真っ暗な玄関。明るい電気もあたたかいリビングも、私を止める声も何も無い。二人の影すら見えないくらい、暗いんだから。

ドアを押して、昼間よりも涼しい風を体に当てる。がちゃりと閉まったドアの音は、やっばりあの頃よりも重くて聞こえて、心臓の奥がちくりと傷んだ。