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「あーあ。逃げられちゃった」
鎌に乗りながら唇についた血を舌で拭い、ぽつりと呟く。
「まさかウルドと恋仲になっていたとは驚きだ。あの子はそんなものに興味がないと思っていたけれど」
それはミカエラ因子を持つが故なのか。
それとも自分の知らないナニカが起こったのか。
まぁどちらでも構わないが。
「ああ…ラファエラ」
人間たちの中に産まれたあの子を見つけた時、どれだけ僕が嬉しかったか。
あの子を喪ってから、何千年という月日が過ぎようとも諦められなかった子。
帰ってくると信じて待ち続けて、そして幾星霜の夜が過ぎて、此方の世界に生まれ落ちた。
一瀬の家に生まれたのは予想外だったけれど、でも天利を使って巧く囲った。ロシアという地に飛ばして、時が来るまではそこでウルドに飼っていてもらえばいいと、そこまでは良かったものの、まさか彼の伴侶になるとは流石に驚きだった。
しかも、相当執着している。
「でも、思い出したはず。自分のことを。僕のことを。ミカエラのことを。ユウのことを」
ー父さま。
ミカエラと違って落ち着いた子だった。あるいは不器用な子とも言える。
だがよくミカエラの世話をし、偽神の世話もしていた。僕の手伝いもしてくれていた。
《破壊者》たる本性をひた隠して、壊さないように、慈しんでいた。守ろうとしていた。
「でも…ねぇ、ラファエラ？」
ミカエラを取り戻したいでしょう？
だって、あの子は君の弟だから。家族だから。一番、君のことを理解してくれた子だから。
ミカエラは身体が弱かったけど、君は心が弱かった。君たちはそんな互いを補うような存在でもあった。
「ああ、僕の愛しい子たち」
僕の唯一無二のセラフたち。
取り戻したい、存在。
僕が唯一守りたいもの。
「…その為には、計画を進めないと」
ミカエラを取り戻すために。
またみなと居られるために。
あの日々を取り戻すために。
「その為には、あの子の中のモノが邪魔だなぁ」
血を飲んだ時に感じた違和感。
あれは吸血鬼の呪い以外のものが混じっている。
あの子を害するものではないようだが、感じたことない気配だった。いずれにせよ不愉快だ。
「さてどうしたものかなぁ」
引き剥がして、あの子に害はあるのか。それともあれは彼女の力になり得るのか。
「まぁ、どちらにせよ…やる事は変わらないんだけどね」
己の足元にある扉を見下ろして、くすりと笑った。
「早くまた会いたいなぁ。…僕の可愛いラファエラ」
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作者名：クウ | 作成日時：2023年4月5日 20時
