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ラファエラの心が私の心を蝕む。
彼女は真祖を求めて、ミカエラを求めて、ユウを求めてる。《みんな》を求めてる。
でも、それは私の心じゃない。それは私の望みじゃない。なのにそうしたいと心が叫ぶ。彼らに乞い焦がれている。
私の身体なのに、私じゃないものがある。それはとても不愉快で。
塗り替えられそうになるナニカが、私を襲う。
「大丈夫だ」
でも、ウルドはそんな私を引き留めてくれる。
行動をくれる。言葉をくれる。心をくれる。
だから私は私であれる。
《一瀬A》として生きられる。
『ウルド、』
すり、と彼の胸元に額を擦り付ける。
『私を繋ぎ止めてください。手放さないでください。そばに居ていいって、愛して、欲してください』
「ああ、勿論」
長い指が私の顎を掬い上げて、上に向かせる。
透き通った、美しくて冷たい、でも熱が籠る瞳が私を絡め取る。
「おまえの居場所は、永遠に俺の隣だ…俺の愛しい、A」
そう言って、キスの雨を降らせる。
もっと、とそれをせがむようにウルドの頬に手を添えれば、彼は何度も何度も口付けてくれた。
『ウルド、ウルド、』
「ああ」
『もっと私を縛り付けて。貴方のこと以外考えられないように。枷をつけて。もっともっと、堕として』
「言われなくとも…俺以外のことに惹かれないようにしてやる」
『うん』
「俺の、俺だけのA」
どろり、と底の見えない色を宿した赤い瞳が私を映す。
「俺以外を見るな。俺のことだけを恋え。俺のことだけを求めろ」
『うん』
「他のものはおまえに必要ない。Aに必要なのは俺だけだ」
『うん』
「いつだって俺はおまえの側にいる。だから俺に手を伸ばせ。俺のことを居場所にしろ。帰る場所にしろ」
『…うん』
「だから、何も怖くない。恐れる必要もない」
ぎゅ、と強く抱き締めてくれる。
温度のない身体なのに、そこには温もりを感じる。
ああ、そうだ。この温もりが私には必要で。
『大好きです、ウルド』
「知ってる」
『だから、私はウルドの側にいたい』
その願いだけが、私の絶対的な望みで。
その想いだけが、私の大切な心で。
『…』
奪わせない。
私の大切なヒトの存在を。私が私であれるヒトの側を。
真祖なんて関係ない。ミカエラなんて関係ない。ラファエラなんて関係ない。
だって私は、他ならぬ《破壊者》なのだから。
『…________』
音にならなかったそれは、空気となって静かに消えた。
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作者名：クウ | 作成日時：2023年4月5日 20時
