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『暴れてるなぁ』
と、遠くに見える人影を視認しながら呟く。
兄さんと、リーグと、シノアに憑依した真祖がそこにはいて。
『…』
自分の中が僅かに騒つく。
それに、鎮めと念じる。
「あ、」
とルクさんが声を上げたので意識を戻すと、フェリドに罪鍵を刺されたリーグが爆発していた。
『アイツなにしてんの馬鹿なの？』
「知り合いか？」
『ちょっとだけパパ』
「え。…あー、そういうことか」
彼は納得したように頷く。
『早く行ったほうがいいですよ。フェリドの目的はアレなので』
「…そうだな」
ちら、と窺うようにして私を見たウルドに問題ないと首を横に振る。
「まずはリーグを捕える」
「わかりました」
「了解です」
『はい』
「行くぞ」
速度を上げて走っていた、その時。
ーーーミツケタ。
『！』
「どうした」
『…』
突然立ち止まった私を訝しげに見てくるウルド達。
『…どうやら、私に客のようです』
現れる、それに視線を向ける。
『ウルド達は先に行っていてください』
「A、！」
『大丈夫です。コイツは下位なので』
《私》の記憶がソイツの情報を教えてくれる。
「ツミビトハコロス」
『…相変わらずだな』
はっ、と鼻で笑う。
『馬鹿の一つ覚えみたいに同じ台詞ばかり。ちょっとは知能数上げたらどうなわけ？…あぁー、そっかぁ』
「…」
に、と笑みを浮かべて。
『おまえらは、《アイツ》に従うことしか脳がないもんねぇ？』
嘲るように言うも、相手はただ沈黙する。
「A」
『大丈夫です。すぐに追いつくので先行っててください。リーグがフェリドにやられますよ』
「だが、」
『本当に大丈夫です。信じてください』
きゅっとウルドの指先に指を絡めて言う。
じっと私を見ていた彼はやがて小さな息を吐いて背中を向けた。
「５分で追いつけ」
『了解です』
「…行くぞレスト・カー、キ・ルク」
ダンッと地面を蹴り付けてウルドは走り出す。一瞬こちらを見たルクさんとレストにひらりと手を振った。ルクさんは軽く笑って、レストは眉根を寄せながら私を見て、そしてウルドの後を追って走る。
『…さーてさて』
「…」
『私が目覚めたから来たのか？』
「ザイニンハコロス」
『ほんとそればっか。流石は下位のセラフだな』
そう嗤うと、瞳を伏せて、ゆっくり上げる。
そして口を開くと、言葉を紡ぐ。
『ーーー来い。《瑚白ノ月(こはくのつき)》』
視界が、白銀に染まった。
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作者名：クウ | 作成日時：2023年4月5日 20時
