9、幸運にして不運な偶然 ページ9
××
「いやああああ！！誰かその男を捕まえてええっ！」
鑑識と別れ、Aが歩いていると、女の甲高い絶叫が辺り一面に響いた。人波を掻き分けて、自転車に乗った男が此方に駆けて来る。そのカゴにはいかにも値が張りそうな、女物のカバンが投げ入れられていた。
「退け退け退け退けぇぇっ！」
「え、ええっ！？」
い、いやだ来ないでください！
国木田に聞かれたら間違いなく背負い投げを食らうであろう情けない心の声。しかし、自転車は全く止まる気配なく此方まで突き進んで来る。この男の座右の銘は猪突猛進なのだろうか───恐らくAが勝手に退くものだと高を括っているのだろう───けれど、Aは動かない。動けない。
そして、Aが動く気配がないことに漸く気がついたのか、キキキキキキィィッと凄まじいブレーキの音が鳴った。
Aは迫り来る自転車と衝突した───否、衝突しかけた。
「いっだぁ……！」
男が寸止めでブレーキを踏んでいたので、Aの方に大した怪我はなかった。しかし……と衝突しかけた男の方に目を向ける。男は倒れた自転車の下敷きになって、白目を剥いていた。
「ア、アタシのバッグゥゥ……！！」
なんだなんだと集まってくる野次馬達を切り裂くように、猛烈な速度で女が走って来る。そして地面に転がり落ちたバックを拾うと大切そうに胸に抱える。その後に盗人の男は警官───ではなく、黒服の男たちによって捕まえられた。
「アナタのお陰よ！」
「ありがとう！危うく、大金をぶん取られるところだったわァ」
「い、いえ、私は特に何も……」
「いいえ……アタシの
女は盗人を何処かに連れて行く黒服の男たちを一瞥するとチッと大きく舌打ちした。そして、再びAに視線を戻し、彼女の顔をまじまじと見つめる。
「真っ白な肌にぱっちりおめめ、それにたっぷり睫毛……アナタ、お人形さんみたいねェ……」
女はAの手を握りながら、ひどくうっとりした声音で呟いた。さながら小さな子供が好みのお人形を見つけた時のようなはしゃぎっぷりだ。
「アナタにお礼がしたいわ！」
「え、お、お礼だなんてとんでもないです！」
ただ突っ立ってただけだし。
お礼をされるほどのことでは、ない。
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柊あんず(プロフ) - 香さん» いつもありがとうございます〜！早速五部の続編もあげましたのでぜひ！！はい、番外編の方の更新はいつになるか分かりませんが今後とも宜しくお願いします…(笑) Twitterやコメントなど、本当に感謝しきれません…！ (2020年6月28日 19時) (
レス) id: 30d83766f8 (このIDを非表示/違反報告)
香 - 四部完結おめでとうございます！四部は七竃ちゃんが不憫すぎて...五部でどんな展開になるのか楽しみです！ Twitterフォローさせて頂いたり、番外編の方のリクエストもさせて貰いました！五部も楽しみに待ってます！ (2020年6月28日 18時) (レス) id: 7e95bd0132 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 後書き。 これにて四部は完結となります！ページ数が足りなすぎて今回はここで書くことになってしまいました。ラストの表紙は竹やま様より。四部の感想などもありましたらぜひ(笑) それではまた近々五部でお会いしましょう！！ (2020年6月28日 0時) (レス) id: 30d83766f8 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 香さん» ありがとうございます！四部もあと少しで終わりますからね！毎回感想を頂けてとっっても励みになります…！ふふふ…続きが気になると仰って頂けるのは作者として本当に嬉しいです…！今後ともどうか宜しくお願いしますね！ (2020年6月20日 20時) (レス) id: 30d83766f8 (このIDを非表示/違反報告)
香 - 更新されてる！！今回もとても面白い話ばかりでした！探偵社と七竃ちゃんの距離がだんだん開いていってしまうようでハラハラしてます。続きが気になりすぎる！！ (2020年6月19日 7時) (レス) id: 7e95bd0132 (このIDを非表示/違反報告)
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