35、今此処にいない友人へ ページ35
××
「……だとしたら今のこの包囲網は最悪。
特務課の特殊部隊はマフィアも恐れる対異能者の専門家。発見されたら毒瓦斯や爆撃を受けて詰む」
虫太郎の言葉を受け、鏡花は顎に手を当て暫し考え込んだ。そんな、安吾さんがと狼狽えていた敦も息を飲んで構えている。それでもAは通話状態にある携帯を切ろうとは思わなかった。安吾を疑ってはいない。否、最早そんなことはどうでもいい。自分は彼の役に立ったのか、今やそれしか考えていなかった。
「───おい、行くぞ」
何か対策を考えたらしい虫太郎がAに視線を移す。彼女は唇だけで微笑んで頷く。引っ掻き傷で赤くなったAの手に、虫太郎は瞳を鋭くさせた。
***
「堂々と歩け」
虫太郎に引率され、敦達は札束を持って廊下を歩いていた。背筋を伸ばし、虫太郎の云う通りに堂々と。幾つも仕掛けられているはずの監視映像は彼らの姿を捉えることは出来ない。
「見よ、楽々通過だ」
盗品を持って映り、犯罪の証拠を消す能力を使えば、あらゆる監視映像から虫太郎達の姿が消える。凄いと感嘆の息を吐く敦の隣でAは自身の手を引っ掻いてはつねり、引っ掻いては撫でるという行為を繰り返していた。視界がくらくらと点滅して、吐き気さえする。
「───安吾さんです！」
敦の声に、Aは顔を上げる。
虫太郎は動揺を露にするが、Aとの電話は未だに繋がっている。よって、此方の情報は全て筒抜けでしかない。
「な、なら金庫に隠れたら……」
「危険すぎる。見つかったら金庫には窓も脱出口もない。袋の鼠になる」
如何する。如何すればいい。
見つかれば終わり。如何すれば───
「まるで密室だね」
その声は、此処にいないはずの友のものだった。
確かにその瞬間、此処にいないはずの友は、虫太郎の前に存在していた。
「来い！」
友からの助言を、無駄にはしない。
▼
「上手くいきましたね！」
「フハハー！見たか特務課！」
虫太郎達四人は銀行を脱け出し、その近くにある裏の通路を歩いていた。自慢げに高笑いをする虫太郎の背中をAはぼんやりと見つめる。このまま安吾から逃げ続けても、Aと安吾が繋がっている時点で逃げ切ることは出来ない。
(矢っ張り、坂口先輩に協力していることを話した方が良いんじゃ……)
否、しかし安吾は自分達が協力関係にあるということを云わないで欲しい、と云っていた。
(……うん、この約束は守るべき)
**
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柊あんず(プロフ) - 香さん» いつもありがとうございます〜！早速五部の続編もあげましたのでぜひ！！はい、番外編の方の更新はいつになるか分かりませんが今後とも宜しくお願いします…(笑) Twitterやコメントなど、本当に感謝しきれません…！ (2020年6月28日 19時) (
レス) id: 30d83766f8 (このIDを非表示/違反報告)
香 - 四部完結おめでとうございます！四部は七竃ちゃんが不憫すぎて...五部でどんな展開になるのか楽しみです！ Twitterフォローさせて頂いたり、番外編の方のリクエストもさせて貰いました！五部も楽しみに待ってます！ (2020年6月28日 18時) (レス) id: 7e95bd0132 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 後書き。 これにて四部は完結となります！ページ数が足りなすぎて今回はここで書くことになってしまいました。ラストの表紙は竹やま様より。四部の感想などもありましたらぜひ(笑) それではまた近々五部でお会いしましょう！！ (2020年6月28日 0時) (レス) id: 30d83766f8 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 香さん» ありがとうございます！四部もあと少しで終わりますからね！毎回感想を頂けてとっっても励みになります…！ふふふ…続きが気になると仰って頂けるのは作者として本当に嬉しいです…！今後ともどうか宜しくお願いしますね！ (2020年6月20日 20時) (レス) id: 30d83766f8 (このIDを非表示/違反報告)
香 - 更新されてる！！今回もとても面白い話ばかりでした！探偵社と七竃ちゃんの距離がだんだん開いていってしまうようでハラハラしてます。続きが気になりすぎる！！ (2020年6月19日 7時) (レス) id: 7e95bd0132 (このIDを非表示/違反報告)
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