11、彼女の涙を拭うには ページ11
××
「今日は特別にこの名探偵である僕が奢ってあげるから感謝して有り難く食べるように！」
あの後、「駄菓子屋へ行くからついてきて！」と、座り込んでいる私を引っ張り出したのは乱歩先輩だった。あれだけ仕事をしろと口酸っぱくして云っていた国木田先輩も止めることはなかった。それだけ気を遣わせてしまったということに罪悪感が沸き上がる。
「ね、この中から何か食べたいのある？」
数々の駄菓子を見せられても、私はなにひとつ食べる気にはならなかった。しかし、乱歩先輩が私を励ます為に買って来てくれたものだということは分かっているし、その好意を無下に出来るはずなんてない。ありがとうございます、と乱歩先輩の手のひらの上の駄菓子にそっと手を伸ばす。
「……無理して食べなくて良いよ」
「え？……あぁ、私は大丈夫ですよ、乱歩先輩。
「うそ、大丈夫じゃないでしょ」
乱歩先輩の瞳が、僅かに見開く。
私はゆっくりと首を横に振る。全然大丈夫だし、全然気にしていない。
だって───
「こんなの、ぜんぶ、ぜんぶ、嘘だから。嘘だから、平気なんです」
きっとそれは逃げなのだろう。
でもこれはぜんぶ、わるいうそだから。
そういうことにしてほしい。
今日のことは悪い夢ということに、してほしい。
「嘘じゃないよ。夢でもないし、嘘なんかじゃないよ」
しかし、それでも乱歩先輩は私の逃げも、私の嘘も許してはくれなかった。世界一の頭脳を持つ乱歩先輩にそんなハッキリ断言されたら、逃げられなくなってしまうじゃないか。
「大丈夫、僕がいてあげるから」
息が止まりそうなほど強く、強く、抱き締められる。背中に乱歩先輩の暖かい手が回されて、じわり、と、目の奥に熱い痛みが走った。
「泣きたいなら、泣いて良いよ」
「──っ……う、ああああああっ……！」
その瞬間、ついに堰を切ったように涙が溢れ出した。泣いて、泣いて、泣けば大人になれるのだろうか。どうせなら、この無価値な涙が価値ある何かにでもなってくれれば良いのに。
お祖母ちゃんのことを責めるつもりは全くない。
寧ろ、今までこんな私をお祖父ちゃんと一緒に育ててくれたことに感謝すべきだ。学校に行かせてくれてありがとう。小さい頃、お母さんの代わりに髪をとかしてくれてありがとう。
けれど、けれど。
それとこれと、今、涙が溢れて止まらないのはまた別の話だった。
**
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柊あんず(プロフ) - 乳酸菌 チーズさん» こちらの方にもコメントありがとうございます！目……目、大丈夫ですか！？ムスカ大佐！？((( (2020年1月25日 21時) (
レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
乳酸菌 チーズ(プロフ) - 目ッ…目がァァ……！！！← (2020年1月25日 20時) (レス) id: df6c59ac1d (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 果汁ジノ％さん» 国木田さんがいたのはアニメですね！確認しましたがやっぱり原作のパーティーに国木田さんはいなかったのでもう既にあの時には捕まっていたんだと思います！よってこれは伏線ではありません……(笑) (2020年1月25日 19時) (レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
果汁ジノ％(プロフ) - 原作では国木田さんもパーティーに出ていたような…まさか、逮捕の時期が早まったのも伏線なのか…！？ (2020年1月25日 19時) (レス) id: 119f59d457 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - ひいやさん» コメントありがとうございます〜！33話の伏線、そして腕の件は四部でちゃんと回収するのでご安心ください〜！「緑の灯」についてはフィッツジェラルド様の著者「グレート・ギャツビー」からの引用になるので、完全に史実ネタですね！ (2020年1月25日 11時) (レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
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