第三十三話 空間魔法 ページ38
亜生 「兄ちゃんだけちゃうで！」
A 「っ…！速い…！」
素早い乱撃が亜生さんから放たれる。
亜生さんの太刀筋が衝撃波として飛んできて、避けるだけじゃカバーしきれない。
動きが見えない…！
その間にも昴生さんの狙撃は続き、ジリジリと追い詰められるのを感じた。
村本 『A、空間を使え』
A 「空間…？」
村本 『一気に敵の裏をかける魔法や』
A 「そんなの、どうやって…！」
村本 『自分の体を敵の後ろへと転送させ。今すぐに』
A 「は、い…！」
そんなことを言われても、やり方が分からない。
自分を亜生さんの背後へ…。
イメージをして力を込めても、望んだ効果は現れなかった。
その間に、亜生さんは風の刃も交えながらどんどん加速していく。
亜生 「このままやと、ジリ貧やで！何かしてや！」
A 「…！」
亜生 「Aちゃん、強いんやろ？もっと見せてや！終わるにはまだ速いって！」
亜生さんが無邪気な笑顔で叫ぶ。
戦う前に見た貪欲な目の意味が分かった気がした。
さっきからずっと感じていた、昴生さんの視線。
私を観察して、自分の力として吸収しようとしているのだろう。
すごい。
強い敵と戦うことを望んでいるようなその向上心の高さが。
私はそんな彼らに、強さを期待されているのだ。
A 「村本さん」
村本 『なんや』
A 「サポート、お願いしますね」
村本 『言われなくても。というか、もうしとるやろ』
A 「もっとお願いします」
頭の中のイメージを鮮明に脳裏に焼き付ける。
力の込め方をクリアに。
守りの壁で一瞬だけ落ち着ける時間を作り、目を閉じて空間を把握する。
天井からこの部屋を見下ろす感覚で、自分から亜生さん、昴生さんの距離を測り、亜生さんの背後に移るイメージをはっきり思い描いた。
村本 『今や。いけるで…！』
A 「いきます…！」
亜生 「え…！？」
目を開けると、亜生さんのがら空きの背中が見えた。
昴生さんの狙撃に備え、背後に守りの壁を作りながら、マシンガンを構える。
昴生 「後ろや！」
亜生 「マジで…！？」
A 「届いて…！」
願いを込めながら、発砲した。
亜生さんの背に、何発か弾が埋まる。
このまま、倒れてほしい…！
だが、目の前に土の壁が現れて妨害された。
亜生 「いったぁ…！」
昴生 「大丈夫か？」
亜生 「…大丈夫！こっからは本気でいくわ！」
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作者名：フール | 作成日時：2019年1月14日 16時
