第二十三話 川西特製紙 ページ28
A 「う、うーん…？」
村本 『起きろや』
A 「うわっ！？む、村本さん！？」
村本 『俺普通に喋るからな？』
A 「び、びっくりしましたよ…」
村本 『はいはい。黙ります黙ります』
頭の中に直接響く声に飛び起きる。
というよく分からない寝起きを迎えた私は、のそのそとベッドから下りた。
それと同時に、ドアがノックされる。
川西 「Aちゃん、ちょっといい？」
A 「はい？」
返事をすると、少し間を置いてからドアが開いた。
川西さんが部屋に入る。
今日の川西さんは黒いロングコートを羽織っていて、かなりカッコいい。
腰の細さが目立つ、締まったフォルムだ。
川西 「おはよう。邪魔するわ」
A 「おはようございます。……あ！それ、いいですね、コート」
川西 「え？ああ、これ？渡されたから何となく着てん」
A 「カッコいいです」
川西 「ありがとう」
ふふって笑うの可愛いなぁ、と眺めていると、突然頭から不快感が溢れてきた。
多分村本さんだ。
嫉妬でもしているのだろう。
あ、更に不快。
私の思考を読んでいるようだ。
女の子の頭を覗き見するなんて、変態だなぁ。
川西 「そや、渡したいやつがあんねん」
A 「何ですか？」
川西 「明日からAちゃんにも仕事が入るらしいから、これ」
A 「…？」
川西さんが四角い紙を手渡してきた。
某海賊漫画で見たことがあるような気がする。
川西さん自身もこの紙がどういう物なのかよく分かっていないようで、
説明しようとしている言葉が小さい。
川西 「それなぁ…魔力のこもった…何かよう分からんやつ」
A 「…えっと、どういう…」
川西 「それに君の魔力こめてみて」
A 「え？こ、こうですか？」
ぎゅっと紙を握りしめてみる。
魔力なんてそもそも私にあるのだろうか。
そう思っていたが、どうやら上手くできているようだ。
川西さんが持っている、私のものと同じ紙が淡く光った。
川西 「お、光った。…これ見たら、俺すぐにAちゃん助けに来るから」
A 「…じゃあ、ピンチになったら、これに魔力を込めたらいいんですか？」
川西 「そういうことや」
A 「ありがとうございます…！大事に使いますね！」
川西 「うん。いつでも呼んでくれてええよ」
川西さんが穏やかに笑う。
私は手の中の紙を握り締め、何度も礼を言いながら頭を下げた。
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作者名：フール | 作成日時：2019年1月14日 16時
