第二十二話 依頼 ページ26
村本 「俺には、中川っていう相方がおんねん」
A 「はぁ…」
村本 「ただな、こっちの世界にトリップするときに、手違いがあって…」
A 「村本さんもトリップでこの世界に？」
村本 「うん。君と同じ世界から」
A 「……」
村本さんの言葉を聞いて確信した。
やっぱり、私、この人をどこかで見たことがある。
浅越さんやギブソンさんを見たときと同じだ。
村本 「…トリップの後、中川の姿が消えたんや」
A 「へぇ」
村本 「軽いな」
A 「あ、すいません…」
村本 「…そのせいで」
村本さんが目を伏せる。
まつげ長いなぁ。
そんな感想を頭に並べていた私に、村本さんの言葉は衝撃的すぎた。
村本 「君を巻き込んでしまった」
A 「…え？」
村本 「君がトリップしたんは、俺らのせいや」
申し訳なさそうに村本さんが呟く。
意味が飲み込めず、固まった。
私が、巻き込まれた…？
目の前の彼が、トリップの原因…？
怒りが溢れそうになり、慌てて頭を冷静に保つ。
A 「…もっと詳しく、説明して下さい」
村本 「うん」
村本さんが姿勢を正す。
そして、相変わらず威圧的な視線で私を貫きながら、話し始めた。
村本 「俺らは最初から変な形でトリップしてん」
A 「……」
村本 「他の奴らは、目の前真っ白！気が付いたらトリップしてました！やけど…」
A 「やけど…？」
村本 「俺ら…俺と中川は、君と同じようにトリップしてん」
村本さんがため息混じりに言う。
私と同じトリップということは…。
車に轢かれたり、床が開いて落っこちたりしたということだろうか。
村本 「車に轢かれたり、床が開いて落っこちたりしたよ」
A 「…同じですね」
村本 「その途中で、中川がおらんくなったんや」
A 「つまり、私に中川さんを探してほしいってことですか？」
村本 「それもある。あいつが見つかれば、君は元の世界に帰れるし」
あっさりと明かされた事実に、私は思考が止まると思った。
元の世界に帰れる…？
そんな希望があっさり出てくるとは思わなかった。
固まる私をよそに、村本さんが椅子から立ち上がる。
村本 「君が話さえぎってばっかりだから、もう時間切れだよ」
A 「え…？」
村本 「とにかく、俺は君の頭の中にずっといるから」
死なないでよ。
村本さんがそう笑ったのと同時に、意識が薄れた。
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作者名：フール | 作成日時：2019年1月14日 16時
