第二話 謎の空間 ページ3
A 「…あれ？」
車にぶち当たってから、数分。
いつまで経っても何も起きない。
自分は死んだはずなのに、普通に呼吸もできれば五感もある。
もしかして、死後の世界に来てしまったのだろうか。
本当にそうなら、多分死神的な何かが現れて、
「グゥエッヘヘ」
とでも言うはずだ。
自分が死神ならそう言う。
その時、Aは閃いた。
きっと死神は自分の扱いに困っているのだ。
何もない横断歩道でトラックにぶつかる
なんてドジな亡くなり方をした自分に気を使って、
どう接したらいいのか分からないんだ！
これそ名推理！
相手が困っているなら、こちらから話しかければいい。
A 「…あのー、これ、目開けてもいいやつですかー？」
精一杯勇気を振り絞って問いかけたが、返事はない。
つまりオーケーということだ。
Aは恐る恐る目を開けた。
A 「え？何、これ…？」
その目に飛び込んできた光景は、異常だった。
ぐにゃぐにゃと灰色の液体が蠢いている、上も下もない空間。
想像していた死後の世界とはかけ離れている。
もしかして、死後の世界じゃない？
とにかく、何か行動してみなければ。
A 「えーっと…」
壁に触れてみる。
すると、グニャンとその形が歪んだ。
A 「うわぁあっ！」
気持ち悪い触感が手に残り、慌てて服に擦り付ける。
と、同時に目に入ったが、制服は汚れていなかった。
あんなにトラックに吹っ飛ばされたら、血ぐらいついているはずなのに。
A 「なんか…ヘンじゃない？」
誰に言う訳でもなく、一人呟く。
改めてこの空間を見渡していると、突然。
A 「え？」
灰色の床が抜けた。
いや、パカッと開いた。
A 「うぁあああああああっ！！？」
重力に従い、真っ逆様に落ちていく。
トラックにはねられ、床が抜け。
散々だ。
このまま落ち続けるのだろうか。
一番嫌な想像が頭をよぎった時。
A 「い、だっ！！」
床らしきものに頭をぶつけ、Aは意識を失った。
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作者名：フール | 作成日時：2019年1月14日 16時
