第十二話 和牛 ページ13
水田 「…何か、変なモンスターやな」
川西 「油断したらアカンで」
水田 「分かっとるよ」
俺達が戦うモンスターは、どこか可愛らしい見た目をしていた。
大きめのスライム、というべきだろうか。
賢志郎の言葉はもっともだが、ここまで露骨に可愛いと気が抜ける。
それに、このモンスターから敵意は一切感じないのだ。
戦う必要が無いんじゃないか？
とりあえず、剣先でつついてみる。
水田 「……反応なしか」
川西 「一応、射るわ」
水田 「頼む」
自爆系のモンスターだった場合を想定して、賢志郎に射ってもらう。
俺がモンスターから離れたのを確認し、賢志郎は弓を引いた。
キレイなフォームだ。
毎回惚れ惚れする。
川西 「あ、これは…」
水田 「…爆発やな」
川西 「下がろか」
矢が刺さった瞬間、モンスターが膨らみ始めた。
爆発か。
賢志郎と共に離れ、片手の盾で身を守る。
少しすると、爆発音と同時に石つぶてが飛んできた。
これで終わりか。
盾を下ろし、一息吐く。
川西 「……水田、それ何や？」
水田 「え？」
賢志郎に指差され、盾を見た、その時。
音を立てて何かが飛んできて、腕に付着した。
水田 「うわっ！？」
川西 「水田！？」
水田 「ぶ、分裂しとる…！」
飛んできた“何か”は、小さくなったスライムだった。
さっきの爆発であの巨大なスライムが分裂して、盾に飛んできたのだろう。
すぐに察知して、俺はスライムを剥がそうとしたが、手では掴めない。
斬り落とすにも腕が近すぎて危険だ。
どうにも対処できずにいると、スライムが突然皮膚へと溶けた。
水田 「っ…！？」
川西 「どうした？」
水田 「これ、毒や…！」
ドクンと激痛がはしる。
スライムが溶けた皮膚が熱く痛んだ。
川西 「…戦えそうか？」
水田 「え？もう敵は、おらんやろ…？」
川西 「いや、あれ…」
賢志郎が見つめている方を向く。
その先には、
「……」
モンスターのような耳と尻尾を持つ、青年が立っていた。
その青年が一瞬で近付き、俺の目の前で止まる。
水田 「…！」
川西 「…近付くな」
賢志郎が弓を引きながら、矢の先を青年に向けて殺気を放つ。
俺も毒で痛む腕で、剣を構えた。
青年が手をかざす。
その瞬間。
川西 「うぁ…！？」
水田 「賢志郎！」
賢志郎の体がスライムで包まれた。
俺は反射的に青年を斬る。
青年はあっさり倒れた。
何だったんだ、コイツは…？
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作者名：フール | 作成日時：2019年1月14日 16時
