第十一話 纏 ページ12
山名 「秋山さん！ダメです！」
モンスターが口を開けて秋山さんを待っている。
秋山さん、血で前が見えてないんだ。
あんなに強がって、俺のために。
もう少し、あと少しで爆発するのに。
なんでこんなに遅い。
俺はなんで、いつもそうなんだ。
山名 「間にあえ…！」
脚が千切れてもいい。
むしろ、千切れればいい。
秋山さんを助けられるなら、それぐらい安い。
脚に力を込めて、強く地面を蹴る。
山名 「秋山さん！」
秋山 「ふみ…？」
ギリギリで腕が届いた。
秋山さんの軽い体を引き寄せ、モンスターの頭に空中から踵を落とす。
「グォオオ！！」
山名 「秋山さんに触んな！」
中指を立てながら叫び、着地する。
秋山さんはもう立てないぐらいに弱っていた。
尻尾を頭にくらって、意識が朦朧としているのだろう。
山名 「秋山さん、大丈夫ですか？」
秋山 「…まだ、いけるから…」
山名 「ダメです。あとは俺がやりますから」
秋山 「……ごめん」
山名 「何も悪くないですよ」
秋山さんは強い人だ。
俺なんかよりも。
謝ってほしくない。
悪いのは弱い俺の方だ。
山名 「もうコテンパンにしたるからな」
モンスターを睨む。
もう力は溜まった。
ボッコボコにしたんねん。
山名 「“纏”」
懐かしい、向こうの世界での出囃子。
頭の中では曲が再生され、戦いのリズムとして響く。
纏という技は、俺だけが使える技だ。
力を溜めて溜めて溜めまくることで、一時的に身体能力を飛躍的に上げる。
そして、炎が扱えるようになるのだ。
今も、両手足には炎が宿っている。
山名 「下がっててくださいね」
秋山 「…うん」
軽く地を蹴り、モンスターに接近する。
３メートルは余裕で超えているその巨大は、近くで見るともっとデカい。
モンスターが俺を踏み潰そうと脚を上げるより速く、ガラ空きの背中に飛び乗る。
勢いのままに、垂直に近い背中を駆け上がった。
頭上に到達した瞬間に、炎を纏った跳び蹴りを叩き込む。
「グォオ！！」
山名 「ラスト…！」
両手足の炎をまとめてモンスターにぶつけた。
これで終わってくれ…！
「グガァアアッ！！！」
山名 「…まだかよ…！」
まだ倒れない…！
迫る牙に、死を覚悟した。
秋山 「ふみ！！」
その牙が、目の前でへし折れる。
秋山さんが双剣で斬ったのだ。
最後の抵抗も失敗したモンスターは、その場に倒れた。
……カッコよすぎますって、秋山さん。
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作者名：フール | 作成日時：2019年1月14日 16時
