4枚目、 ページ9
僕は居酒屋に来ていた。
『久し振りだなぁ、居酒屋とか…前は頻繁に出入りしていたのに』
僕はお酒が好きな訳じゃないけど、お酒に強かった。
だからお酒に弱いけどお酒が好きな友達によく誘われて飲まされては酔って眠り込んだ友達を連れて帰る、というのが日常だった。
何故かそういう人が僕の周りにはわんさかいて、かなり大変だった。
皆酔った時が凄すぎて、後日顔を合わせたくなくなった人もいるくらい。
『おじさん、生１つ貰えますか』
「ヘイおまち！」
『…早いですね』
「兄ちゃんくらいの世代だったら取りあえず生って言うからなぁ」
がはは、と豪快に笑う店主。
僕も愛想笑いで返し、一口飲んだ。
「…なんだい兄ちゃん、浮かない顔してるね」
ピタリ、とグラスを持つ手が止まった。
『…分かるんですか？』
「あぁ、分かるさ。経験からな」
僕は暫し俯いて、それから顔を上げた。
『…僕、好きな人に別れを告げたんです。でも、本当はそうしたく無かった。
けど、仕方ないんです、互いの為なので…
彼女が過去に縋り続けたら、ただ辛いだけですから。
…でもやっぱり、別れを告げるのは…寂しいです』
僕は苦笑しながら言った。
店主は真剣な面持ちで聞いてくれていた。
「…そうか。そりゃ別れを告げるのは寂しいし、やりたくねぇさ。
けれど…それが互いにケリをつける為なら、仕方ねぇのかもしれねぇな…」
思わず僕はカメラを構えた。
そうしていないと、落ち着かないから。
「…兄ちゃん、カメラマンなのかい？」
『えぇ、まぁ…』
「趣味があるってのはいい事だ、辛い時にそうやって没頭すれば、いつの間にか忘れてる事もあるしな」
僕は『そうかもしれないですね』と笑い、もうすぐ空になるグラスを撮った。
写真には、既に飲み干されたグラスが残っていた。
僕は残りを飲み干して立ち上がった。
『ご馳走様でした、おじさん。…なんだか、スッキリしました』
「おう、それなら良かった。…俺も兄ちゃんと同じような事あったからよ、また辛い事があったら来てくれや」
『はい、ありがとうございます』
店主はニカッと笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くれーぷ/紅花(プロフ) - サクハさん» わざわざありがとうございます！！はい、作品作り頑張ります( ´ ▽ ` )ﾉ (2017年10月14日 21時) (
レス) id: d036a490f0 (このIDを非表示/違反報告)
サクハ(プロフ) - 完結おめでとうございます!次の作品待ってますね! (2017年10月14日 21時) (レス) id: bb1798707a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：くれーぷ | 作成日時：2017年9月17日 20時
