【文スト】文豪達の吹奏楽部は今日も活動中です。

番外編！その5 ページ14

《その頃》


太宰「…」




敦「あ、太宰、さ…」




僕は太宰さんを呼ぼうとして、やめた。




何故か…話し掛けてはいけない様な気がしたから。




太宰さんは何処か一点をぼうっと見つめていた。




その目は此処では無い何処かを見ていた。




太宰「…はぁ…如何しても、こんな楽しい時に君をまた思い出してしまうのだよね…」




敦(…誰の事だろう…？)





太宰「…だから…少し寂しくなるよ…君が居ないと思うと、辛くなる」





敦(…)





太宰「………だからそろそろ出て来たら如何だい、敦君」





敦「えっ」





太宰さんは此方を振り向いてニヤリと笑った。





敦「き、気付いてたんですか！？」





太宰「当たり前だろう？君が来た当初から気付いていたさ」






敦「さ、流石ですね…太宰さんは此処で何をしていたんですか？」





そう尋ねると、太宰さんは急に真剣な顔付きになった。






太宰「…そうだね…簡単に言えば、大切な記憶を、思い出していた…かな」






敦「…そうですか…」







太宰「……ねぇ敦君」







敦「はい？」








太宰「君は一分一秒を無駄にしてはいけないよ。
私の様になってはいけない…
大切な人を守れなかった、私の様には決してなってはいけないよ。
何もしないで終わらない事。…いいね？」






敦「…は、はい！」







僕が返事すると、太宰さんは何時もの表情に戻って笑った。







太宰「ふふっ、良い返事だね。これからも頼りにしてるよ、後輩君」





敦「はい…って、太宰さん。でも書類整理とか僕に投げ出すのやめて下さいよ」






太宰「うーん…それは記憶に無いなぁ」






敦「とぼけないで下さいよ、もう！」






僕等の笑い声が、誰も居ない音楽室に響き渡り、そして消えた。









太宰(…私は君に色々学んだ…君のお陰でこんなにも良い後輩を持てた、こんなにも良い日常になったよ









、









、







___織田作)






何処からか、美しいホルンの音色が聞こえた様な…気がした。

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