こんなに近くにいたなんて。 ページ5
.
「今日のLHRは・・・学級役員を決める。
1人1つは何かしら持つことになるから・・・」
.
田茂先生が、
ずらずら、と黒板に委員会とか、
係の名前を書いて行く。
.
最後の文字を書き終わった後、
先生はくるり、とこちらを振り返って、
黒板をチョークの先で指した。
.
「好きなの選べ?」
.
きょとん、と瞳を揺らした後、
うん、ともすん、とも言わない私たちを見て、
先生は、大きなため息をついた。
.
「お前ら、なぁ・・・」
.
はぁ、ともう一度息を吐いた先生は、
じゃぁ、学級委員やるやつ、と
声を上げた。
.
中々決まらないそれらに、
先生も、眉間にしわを寄せ始めた。
.
「じゃぁ・・・図書委員、」
.
その言葉に、
あたりを見回して。
.
誰も手を上げていないことを確認した後、
私やります、と右手を上げた。
.
田茂先生は、
私を見て、安心したように笑うと、
.
「じゃぁ、鈴森と・・・江波戸。他いないか?」
.
サラリと、爆弾を落としたような気がして。
黒板に書かれる私の名字と、
″江波戸″の文字に。
.
後ろを振り向いたら、
やっぱり、ふわふわの髪の毛を揺らして。
.
唇をちょこっと噛んで、
黒目はこちらを向いていて。
.
きゅ、と目を細めた後、
小さな頭がぺこん、と下げられて。
ふわふわの髪の毛が、サラリと揺れた。
.
・・・こんなに、近くにいたなんて。
気づかなかった。
.
260人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ