私が勝手に、勘違いをした結果。4 ページ38
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「何してるの、」
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その、冷たい声に、
ひゃ、と身体を縮こませる。
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反射的に、
目の前にあった白尾くんの練習着を、
ぎゅ、と握ると、
それを見た江波戸くんが、顔をしかめた。
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「離れなよ、」
「江波戸、」
「鈴森さん、」
「・・・」
「・・・離れて、」
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あぁ、好きだな、と思う。
語尾が小さくなる、
自信なさげなその声も、
ゆらゆらと揺れる、黒目がちな目も。
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江波戸くんの言葉に従って、
そっと、白尾くんの練習着を
握っていた手を離す。
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それを見て、
遠くの彼は、ふ、と息を吐いて。
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こつん、こつん、と
廊下に音を響かせながら、
私に近づいて。
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「行こ、・・・練習、」
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差し出された手を、
取るなんて、
そんなの私にはできなくて。
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あんな、映画のワンシーンみたいな告白のそれを、
見た後に、
彼に好きだと言える勇気なんて、
これっぽっちも持ち合わせていなくて。
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「白尾くん、」
「ん？」
「・・・いこ、」
「あぁ・・・おう、」
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近づいては、いけない人だと分かった。
これ以上、彼の傍にいれば、
きっと私は、後戻りできないほど、
彼の事が好きになってしまうから。
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差し出された手を見ずに立ち上がって、
白尾くんの手をひっぱりながら、
廊下を進む。
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江波戸くんが、
私の方を見ていたのも、
小さく、息を吐きだしたのも気づいていたけど。
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後ろを振り返る勇気だって、
今の私には、
ないんだもの。
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可愛いカノジョと、可愛いカレ。→←私が勝手に、勘違いをした結果。3
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