私が勝手に、勘違いをした結果。3 ページ37
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「鈴森？」
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どれくらいそうしていたか分からない。
ただじっと、
時間が過ぎるのを待っていたから。
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ぎゅ、と膝を抱え直した時に、
上から降ってきた声。
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恐る恐る、顔を上げると、
白尾くんが、こちらを見下ろすように立っていて。
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「何してんだよ、大丈夫か？」
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″もう、江波戸来たんだけど、″
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そう、付け足して、
困ったように笑う。
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屋上行かなかったのか？って、
そう聞かれて。
白尾くんと目を合わせたら、
分からないけど、泣けてきた。
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ぽろり、ぽろり、と
頬を伝う涙に、
白尾くんは大きな目をもっと見開いて。
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「えぇ？ちょ、どうしたんだよ？」
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慌てたようにしゃがみ込む。
私と目線を合わせるようにして、
そっと、長い指が目じりを拭った。
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そう、私が、
勘違いを、してただけだ。
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江波戸くんが、
特別私だけに優しかったわけじゃないのに。
皆に、分け隔てなく接していたのに。
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それに、恋をしたのは、私だ。
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「ちょ、もう・・・泣きやめよ、」
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ぽん、と頭に、
大きな手が乗る。
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あぁ、それだって。
私が、勝手に勘違いをしただけだ。
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白尾くんのユニフォームに、
そっと、額をつける。
重力に従って、流れた涙は床に落ちた。
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そっと、肩にかかった手は、
ぐ、と私の体を引き寄せて、
とんとん、と背中が優しいリズムで叩かれる。
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「鈴森？」
「鈴森さん？」
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名前を呼ばれたのは、同時だった。
近くで聞こえた声に、顔を上げる。
白尾くんの長い睫毛が目に入って、
顔の近さに気づいて、驚いた。
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そして、もうひとつ、
声がした方を向く。
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会いたくない人が、そこにいた。
ふわふわの茶色い髪の毛が、
彼の表情を、読めなくさせる。
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「・・・白尾、も」
「・・・」
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目が合う。
あの、優しい目なんかじゃなくて、
怖い・・・怒ってる、目。
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「何、してるの、」
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低い、低いその声は、
廊下に響いて、
私を責める言葉に滑車が掛かった気がした。
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