私が勝手に、勘違いをした結果。2 ページ36
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きぃ、と
古びた金属の音がする。
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すぐに見つかった、
背の高いシルエットに、
そっと、近づこうと足を出した時。
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「あのっ、」
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そんな、鈴のなるような、
可愛らしい声に、
動きを止めた。
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「江波戸先輩、」
「・・・」
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あぁ、嫌なことって、重なるんだ。
帽子をかぶってない、
江波戸くんのふわふわの髪の毛が、
風で揺れる。
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「好きです、」
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彼女の長い黒髪も、
風でサラリと揺れた。
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江波戸くんは、黙ってる。
彼女の告白に、
何も言わずに、ただ、黙ってる。
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聞きたく、ないのに。
私が聞くべきそれじゃ、ないのに。
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どくん、どくん、と
胸は大きく音を立てて。
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その、意味を考える暇もなく、
彼の、優しい声が聞こえた。
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「・・・ありがとう、」
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ふわふわと、
宙に舞う甘い優しい声。
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続きを、聞かなくても分かった。
彼が、この先彼女に何を言うかなんて。
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「嬉しいよ、」
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その、言葉を聞いて、
そっと、屋上へ続く扉を閉めた。
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急いで、階段を下りる。
これから出てくるだろう2人と、
鉢合わせないように。
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死角になる、踊り場に座りこんで、
膝を抱え込む。
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そう、きっと。
気の胸のドキドキは。
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彼が・・・江波戸くんが。
他の女の子に取られちゃうっていう、焦りとショックだ。
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綺麗な子だった、
小柄で、可愛らしい女の子。
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彼の隣に立っても、
見劣りしないその子はきっと。
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・・・今から、
江波戸くんの″恋人″だ。
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