″不思議″と共存するもの。2 ページ23
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「鈴森さん、」
「あぁ、江波戸くん・・・おはよ、」
「うん、おはよ。手伝うよ、」
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そう、言ってくれる江波戸くんも、
肩に掛けてる鞄は重そうだし、
自分のバットも背中に掛けてる。
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「大丈夫だよ。これまで取られたら、私役立たずみたい(笑)」
「なんで?」
「え?」
「・・・や、なんでもない、」
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ふる、と頭を振った後、
籠の手持ち部分を。
ぎゅ、と持って力を入れた江波戸くんは。
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指と指が、
当たってるのに。
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そんなの、全然気にしてないような素振りで。
ずんずん、と
坂を登っていく。
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「役立たずじゃ、ないよ、」
「へ?」
「いてくれるだけで、いいんだよ、」
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ぽつり、
呟くように言われたそれの。
意味を聞く時間は、全くなくて。
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口を開いたら、
もう、そこは宿舎の前で。
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結果、手を添えるだけになってしまった
球が入った籠を、
江波戸くんはひょい、と抱えて、
一人で運んで行ってしまう。
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「あ・・・」
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なにそれ。
いてくれるだけでいい、なんて、
初めて・・・言われた。
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江波戸くんは、不思議だ。
ふわふわ、いつも笑ってるだけなのに、
時々、凄く怖い声を出すし。
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時々、怒ってるように目を細める時もある。
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「鈴森さん、」
「・・・」
「何してるの?おいで?」
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なのに、次の瞬間には、
優しく笑って、優しい言葉を掛けてくれて。
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江波戸くんは、不思議だ。
可愛くて、分かりやすいはずなのに、
私には全然分からない。
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愛して、愛されて、また愛して。→←″不思議″と共存するもの。
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