不機嫌の公式、可愛いの定義。5 ページ21
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「・・・ごめん、ね？」
「ん？」
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暗い夜道を、
オレンジ色の街灯が照らして、
少し不気味な色になる。
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「や、まだ・・・いたかったかな、って」
「・・・」
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隣を歩く江波戸くんは、
あのまま柚子ちゃんに言いくるめられて、
私を家まで送るために、
サザンウィンドをみんなより早く後にした。
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「皆の、ところに、」
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ぽつり、
零した言葉は江波戸くんに拾われることなく、
暗闇にふわり、と溶けていく。
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「鈴森さんは？」
「え？」
「白尾たちと、帰りたかったんじゃないの？」
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語尾が小さくなって、
自信のないようなそんな声に、
思わず顔を上げた。
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こちらを見ずに、
前を見て歩く江波戸くんの顔が、
暗くてよく見えない。
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「そんなことな・・・」
「ほんとに？」
「え？」
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私の答えに被せるように言われたそれは、
さっきと違って語尾が強い。
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「鈴森さん、」
「・・・」
「白尾と仲良いのに、」
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突き放すように言われた言葉に、
何て返したら良いか分からなくて、
そのままずっと、帰り途(みち)は無言のままで。
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送ってもらった家の玄関前で、
ありがとう、と言ったら、
うん、と彼は小さく頷いた。
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「じゃぁ、・・・おやすみ、」
「うん、」
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彼の言葉に頷いて、
向けられた彼の背中に。
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「柚子ちゃんが！」
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もう一人のマネージャーの声を呼んだら、
びくん、として、江波戸くんは立ち止まった。
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「江波戸くんのこと、″可愛い″って、」
「・・・」
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くすくす、
上下する肩から、
江波戸くんが笑ってるのが分かる。
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くるり、と振り返って、
細めた目を私と合わせると、
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「あんまり、嬉しくないかも、」
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そう言って、
今度は手を振って、
後ろを向いた。
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歩く江波戸くんの髪の毛が、
ぴょこぴょこ、と
暗闇の中で揺れた。
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″不思議″と共存するもの。→←不機嫌の公式、可愛いの定義。4
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