偶然が必然に変わる、確立を求めよ。2 ページ12
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箱の中から、
表紙が綺麗にラミネートされた文庫本を、
数冊手にとって。
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物語、とか
随筆、評論・・・。
テーマごと、作者ごとに、並べていく。
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去年も、おとどしもやった、この単調な作業は、
面倒だって、生徒には不人気な仕事で。
帰宅部で、何もやることがなかった私は、
放課後、図書室に寄っては、
こんな仕事を、やっていた。
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「え、っと・・・か、河西、かさ・・・い、」
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あっちに行ったり、こっちに行ったり。
上から下まで、
目を動かしながら、
目的の場所に本を置いて行く。
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とん、と背中が何かにぶつかって。
ひゃ、と素っ頓狂な声が出た。
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「あ、ごめ・・・」
「うん?」
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反射的に謝って顔を上げたら、
目に入ったのは学ランで。
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背の高い江波戸くんが、
何が?と、瞳を揺らして、首をかしげた。
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「あ・・・ううん、なんでもない、」
「そ?」
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当の本人は。
全く気にしてないそぶりで、
長い背丈と、長い腕を存分に活かして、
近くにある脚立なんて必要ないとで言うように、
どんどん、仕事をこなしていく。
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私も、新しく数冊手にとって。
背表紙を見て、
″湧口 俊夫″の名前に。
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きっと、この裏にあるであろう、
評論の″わ″行の場所。
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よいしょ、と本を抱え直して。
少し早足で、
本棚の裏側に回った。
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