偶然が必然に変わる、確立を求めよ。 ページ11
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「江波戸くん、江波戸くん、江波戸く!!」
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静かな放課後の図書室で、
彼の名前を、続けざまに3回呼んだら、
鈴森さん?と、きょとん、とした声が返ってきた。
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「だ、大丈夫・・・?」
「じゃない(笑)」
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文庫本が入った段ボール3箱。
そんなに重くないから、
そう思って重ねて抱えたそれは。
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あまり、背の高くない私にとって、
無謀な挑戦だったらしい。
一番上に乗せた箱は、
バランスを崩せば今にも落ちそうだ。
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段ボールのせいで、
前は全然見えなくて。
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多分、困ったように笑ってるだろう、
江波戸くんの顔も、見えてない。
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腕の中の重さが軽くなったと思ったら、
視界も開けて、
目の前にはにこにこ、笑ってる江波戸くんがいた。
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「言ってくれれば、よかったのに、」
「え?」
「そしたら、鈴森さんに持たせたり、しなかった」
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大きな黒目は、
一瞬で私を通り過ぎて。
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ふい、とそっぽを向いてしまう。
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当然のように、2つ持たれた段ボール。
背の高い本棚と本棚の間にそれを運んで、
中にしまってある新品の文庫本を、
ルールに
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グラウンドからは、
にぎやかな声。
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今の時間は、サッカー部が使う時間。
野球部は、部室の近くで行う基礎練の最中だから、
じゃぁ、その時間だけ。って。
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田茂先生に頼んで、
私と江波戸くんは、図書委員の仕事の真っ最中だ。
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