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「彼を専属騎士にするのはやめましょう! 騎士団の団長に聞きましたが、彼はスラムの出ですよ!? 貴方様を守るどころか、命を狙うのかもしれません!」
彼から大分離れた場所でそう言ったカウィ。
「カウィ、貴方は人を生まれで判断するというの?」
「そんな事ありません! 獣人は人間よりも力も強いですし、騎士となるならば大変力になるでしょう。 ……しかし、専属騎士は違うのです!」
「何よりも主人を優先し、守り、付き従うこと……よね?」
ヤシュムが専属騎士を探している間、耳にタコができるほど聞いた言葉だ。
「えぇ。 彼には申し訳ないですが、彼の態度からはそれが微塵も感じられない。 もし何かあったらどうするのです?」
私を非難するような目でそう訴えかけるカウィ。
「そんな事、ありえないわ。 カウィだって知ってるはずよ? 私の人を見る目は間違ってないって」
「それは……そう、ですが……」
「異論は無くなったわね? お父様に言って、彼を……ティモシー・ラジャーを、私の専属騎士にしますわ」
「承知致しました……」
少し悔しげな目をしながらも了承したカウィの肩を叩いた。
「ティモシーの教育は貴方に任せるわ。 よろしくね」
「はい」
ティモシーを専属騎士にすると決めてから数日後、私は執務室に呼び出された。
執務室の椅子に座るお父様がいつもよりも感情の無い声で私に言った。
「A。 獣人を専属騎士にするのだな」
「えぇ。 何か問題が?」
私がそう言うと、ティモシーの情報が載っている資料に目を落とした。
「ティモシー・ラジャー。 年は19で、虎の獣人。 ……スラム出身」
お父様もその事を気にするのね…… まぁ、当たり前だと思うけれど……
「彼の情報が何か? 不備などは無いと思いますけれど……」
あくまで自分からは彼の出身の事も彼の人種の事も触れない。
私のその態度が気に食わなかったのか、お父様は穴が空くほど見ていた資料から目を上げ、
「獣人を、それもスラム上がりの者を専属騎士にしてみろ。 直ぐに周りの者から非難の目に晒され、コイツもお前もただでは済まんぞ?」
と、脅しのように言われた。
「構いませんわ。 彼ならきっと素晴らしい私の味方になってくれますから。
他に御用はございませんわね? これで失礼させていただきますわ」
私はそう言って、お父様の返事も聞かない内にお父様の執務室から出て行った。
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