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近くで見ると、更に体格がいい事が分かる。
｢こんにちは、貴方の名前を聞いてもいいかしら｣
しゃがみこんでいる彼の目線に合うように、膝を折ってそう尋ねた。
｢あ？｣
しかし、返ってきたのは地を這うような低い唸り声で言ったその一音だけだった。
｢貴方の名前よ｣
｢テメェに教える意味が無ぇ｣
未だに目を合わせず不機嫌そうに言うものの、ちゃんと返事をくれる事に安心しながら、私は彼の名前をずっと尋ねていた。
｢意味ならあるわ。 私、貴方が気に入ったの、私の専属騎士になりなさい｣
｢俺は、物じゃねぇ｣
｢えぇ、知ってるわ。 だから、貴方がどうしても私に名前を教えたくないのなら無理には聞かないし、貴方が私の専属騎士になりたくないのなら無理にはさせないわ｣
私のその言葉に顔を上げ、拍子抜けしたような表情を浮かべる彼。
その際に、彼の目の色が左右で違う事に気がついた。
｢それを踏まえてもう一度聞くわね。 ……貴方の名前は？｣
｢ティモシー…… ティモシー・ラジャーだ｣
左右で違う色をした目をギラギラと光らせながら、そう名乗った彼は、あまり騎士とは言えない風貌をしていて、これから教育するであろうカウィの苦労を考えた。
まぁ、カウィならできるでしょう。
呑気にそう考えながら私は右手を出して、
｢私はA。 この国の第一王女よ｣
と、名乗り、ティモシーと握手を交わした。
｢A様！ 急にどこかに行くのはおやめ下さいと、あれほど申していましたよね！？｣
少し怒っている様子のカウィが私達の元へ来た。
｢カウィ、いい所に来たわね｣
私のその言葉とティモシーの姿を見て事の事態を察したのか、カウィは最悪だとでも言いたげな表情をした。
｢紹介するわ。 私の専属騎士になるティモシー・ラジャーよ。 ティモシー、彼はカウィ・フィリップ。 貴方の上司になる人よ｣
｢……A様。 少々よろしいですね？｣
よろしいですか？ と、聞かないあたり、私が想像していたよりもカウィは怒っているようだった。
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