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｢今日は、陛下の執務の補佐などという仕事はありませんでしたが……？｣
ジャミルを見送り、そのまま体を応接間のソファに預けると、カウィの厳しい指摘が聞こえてきた。
｢あー……あるわよ。 この宮にもう一人騎士を入れるんでしょう？ 主である私がしっかり見定めないといけないわ｣
私のその言葉に冷ややかな目を向けながら、カウィは言う。
｢今A様に必要なのは、騎士ではなく従者だと思いますが？｣
｢従者ならいるわよ。 私の目の前に｣
｢私は騎士です｣
｢でも、今日の私のスケジュールを一番理解しているわ｣
｢私は騎士です｣
｢……そう。 なら、新しく入る騎士を従者にしましょうか。 強くても弱くても、従者の仕事ができるなら問題ないわ｣
少しムッとしながらそう言うと、
｢確かに、A様の強さはそこらの騎士よりも上ですが、それはドレスを着ていない時に限る話です｣
と、冷たく返された。
｢……さ、従者を探しに行きましょうか｣
｢騎士探し、です｣
｢大した誤差は無いわよ｣
｢あります｣
そう軽く言い合っていると、騎士の訓練場に着いた。
｢騎士団の団長に資料を用意していただきました｣
そう言って、私に数十枚の紙の束を渡すカウィ。
｢ありがとう、流石カウィね｣
｢いえ｣
手元の資料と照らし合わせながら、訓練中の騎士の様子を観察する。
｢……あの騎士は何をしているの？｣
獣人の荒々しい見た目とは裏腹に、訓練場の隅で座り込んでいる騎士が目に入った。
｢資料には居ないようだけど…… 新しく入った騎士なのかしら？｣
｢そのようですね、あまり馴染めて居ないようですし｣
その獣人の姿に目を奪われた私は、訓練中の騎士達の間をスルスルと通り抜けながら彼の元へ向かった。
｢！ A様、危険です！｣
カウィが私を追いかけようとするが、どうやら持ち前の体格が仇となったみたいで、私のように騎士達の間を歩く事ができず、足踏み状態になっていた。
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