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婚約者候補が二人に絞られた時には、私はもう15歳になり、熱砂の国の裕福な家の子供達が通うカレッジに入学する事が決まっていた。
婚約者候補の一人は、熱砂の国随一の規模を誇る商人アジーム家の長男、カリム・アルアジーム。
そして、もう一人は夕焼けの草原の第二王子、レオナ・キングスカラー。
どちらの男性も私と年齢が近い。
「A様、カリム様がお越しです」
ヤシュムが探して来た騎士、カウィが私を呼んだ。
「えぇ、今行くわ」
「……A様、その格好はいけません」
肩まで掛かった緑がかった金髪を左右に揺らし、私の行く手を阻んだカウィ。
「何か問題が?」
「問題しかございません、A様。 もう少し露出をお控え下さい」
「だって暑いんだもの。 それに、カリムとはいずれ結婚するのよ? この位どうって事ないわ」
「レオナ様の前でもそれが言えますか?」
眉間に皺を寄せた顔をずいっと私の前に出し、そう言ったカウィ。
「っ! ……分かったわ、着替える」
「それでいいのです」
カウィは貴族の出だからなのか、それともヤシュムに口酸っぱく言われたからなのか、私が露出するのを極度に嫌がる。
そのおかげか、ヤシュムがいなくなったこの宮でも叱り声は絶えない。
「別に、この位なら問題ないわよねぇ……?」
ベッドサイドで羽を休めていたオウムにそう声をかけるが、
「布ガ少ナイ! 少ナイ! モット着テー!」
と、甲高い声で返されるだけだった。
「……これで、満足かしら? カウィ」
先程着ていた所から上着を羽織り、姿を見せると、
「まあ、その位ならよろしいでしょう」
と、ふてぶてしく言った。
良かった、これでまだ駄目だと言われたら杖に手が行くところだったわ。
そう安心しながら、私は長い裾を揺らして応接間に向かった。
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