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婚約者探しに駆け回っていたある日の事、お父様に呼ばれた私は王の執務室にいた。
｢お父様、何かございましたでしょうか｣
｢嗚呼。 お前達、下がりなさい｣
執務室にいた、宰相などの補佐官達が次々と下がっていった。
｢……さて、そこに掛けなさい｣
お父様の机の前に置かれているソファを示されそこに座ると、お父様も目の前に座った。
｢これは、乳母にも誰にも言ってはならぬ事だ｣
重々しくそう言ったお父様。
私はただ事では無いことを悟り、膝の上に置いていた手に力が入った。
｢……先日、第三王女か産まれたと宣言したが＿＿＿あれは嘘だ｣
｢……え？｣
……まさか。
｢我が熱砂の国に、第一王子が誕生した｣
｢……っ！ おめでとうございます！｣
｢いいや、違うんだ｣
……違う？ どういう事だろうか。
｢しばらく、第一王子の事は第三王女として扱おうと思っている｣
｢……それは、バトラの影響もあるのでしょうか｣
二つ下の第二王女の顔を思い浮かべた。
あの子のわがままはもう、年相応の言葉では片付けられなくなってしまっている。
｢それも、ある。 あの子が望めば周りの下級貴族がどんな手を尽くしてまで実行しようとするからな｣
｢バトラがもし王座を望んだなら……｣
｢第一王子に被害が出るだろうな。 勿論、Aお前にも｣
バトラは純粋な子だ。 周りの大人に影響されやすい。
……それは、良い意味でも悪い意味でも。
｢早急に、バトラに教える教師が必要かと｣
｢嗚呼。 お前を支持している貴族達から選ぼうと思っている。 彼らは国の事を一番に考えるからな｣
｢はい。 それで私は何をすれば……？｣
｢お前には、私の仕事の補佐をしてもらおうと思っている。 第一王子がしっかりするまでな｣
｢承知致しました。 婚約者探しと並行して行いますわ｣
｢お前には苦労をかけるな｣
｢いいえ、この国の為ならばこの命もかける覚悟ですから｣
私のその言葉を聞いたお父様は、心底安心したような顔で微笑んだ。
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