19 ページ19
・
｢A様、陛下がお呼びです｣
チュリーと話していると、部屋の外から私を呼ぶ騎士の声が聞こえた。
｢……ではまた、お話しましょう｣
｢ええ、今度は直接ね｣
ユニーク魔法を解いた後、騎士に返事をする。
｢分かったわ、準備をするから少し待っていてもらえる？｣
｢承知いたしました｣
｢お待たせ｣
｢いえ、では参りましょう｣
大勢の騎士を引連れて、お父様の執務室へ向かう。
｢陛下、A様をお連れいたしました｣
｢入れ｣
静かで厳格なお父様の声が分厚いドアの向こうから聞こえる。
｢A様、お一人でお入りください｣
｢分かったわ……失礼いたします｣
重いドアを開いて執務室に入る。
お父様は私に目もくれず机の上に置いてある書類に目を通し、サインをし続けていた。
その横にある机で、ジェシーが本を読んでいるのが目に入った。
あれは……王宮の歴史だろうか。
私も小さい頃はお父様の隣でああして読書に勤しんでいたものだった。
｢あっ、お姉様！｣
本を投げ出してこちらに来てしまいそうなくらいの勢いでそう言ったジェシーに、お父様は静かに、
｢ジェシー、座っていなさい｣
と、一言行ったあと、私に机の前に置いてあるソファに座るように言った。
｢……カウィ・ラジャーの事だが｣
書類仕事を中断し、机を挟んで向かい側のソファに座ったお父様はそう話し出した。
｢彼の事は本当に残念だった。お前の良き理解者を一人失ってしまって本当に残念だ｣
｢……お父様……｣
｢ラジャー家から今朝連絡が来た。喪に伏した後爵位を誰が継ぐが決めるので、お前が言いつけた休暇よりも長くティモシー・ラジャーを引き止めることになるだろう、と｣
｢それなら大丈夫ですわ。私はひとまず宮を直して侍女達を呼び戻すことに専念いたしますから、王宮の敷地から出ないでしょうし｣
王宮を歩き回るくらいなら侍女を連れて行くだけで十分だろう。
｢分かった。もし王宮の外に出るようなら誰か騎士を連れて行きなさい｣
｢お父様のご配慮、感謝いたします｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 69人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
