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私のその言葉を聞いた騎士は言葉を詰まらせる。
｢申し訳ありません、A様がご自分の侍女達を心配しているのは分かります。しかし、いつ刺客が来るかも分かりません。どうか、ご理解下さい……｣
貴方様の手足を、命を懸けて守ったカウィ・ラジャーの為にも。
今度は私が言葉を詰まらせる番だった。
｢……分かったわ。でも、侍女達の様子は教えて頂戴｣
｢承知致しました。部下を向かわせます｣
｢えぇ、ありがとう｣
私は部屋に戻り、水瓶を持ってベットの上に乗った。
｢……報告なんて待っていられないわ｣
最初からこうしておけば良かった。
ずっと身につけていたネックレスをドレスの中から取り出して手の中でそっと握る。
｢全てを現せ。……
私だけの魔法を使う。
水瓶の水面が揺れて、覗き込む私の顔が段々と崩れていく。
水瓶の中に飲み込まれていく感覚を覚えた瞬間、私の顔ではなく、王宮内のどこかの部屋が見えた。
｢ここは……コッブの水の中かしら｣
天井と、そこから吊り下げられているカーテンだけが見えている。
｢A様……？見ていらっしゃるのですか？｣
上から覗き込む侍女の顔が見えた。
｢チュリー、あなたの顔が見れて本当に嬉しいわ……｣
｢A様は、大丈夫でしょうか？久しぶりの王宮でちゃんと寝られておりますか？｣
乳母のヤシュムの娘であるチュリーは私の姉のような存在だ。
隠居生活を送っているヤシュムに代わって、献身的に私を支えてくれているのだ。
｢他のみんなの様子はどうかしら｣
｢皆怪我はしておりますが軽傷でございます。……これも、ラジャー様のお陰です｣
悔しそうな表情を浮かべながら最後にそう呟いたチュリー。
｢なら、早く治して頂戴ね？一人で王宮にいるのは寂しいから……｣
｢勿論でございます。……ティモシー様はどれくらい家に帰られるのですか？｣
｢三週間よ。……でももっと休むかもしれない｣
カウィにはティモシーの他に妹が一人いる。
どちらが爵位を継ぐのか、中々決まらないだろう。
｢……A様。私、早く治してA様の元に戻って来ますから｣
私の暗い気持ちを読み取ったのか、そんな心強い言葉をかけてくれるチュリー。
｢A様の専属騎士のティモシー様には遠く及びませんが、A様のお傍に居れるように私も強くなったのです｣
｢……ありがとう。本当にありがとう……｣
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