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「……っ!カウィは?宮の侍女達は?」
「落ち着け、宮からの情報を待とう」
「そうね……そうよ、カウィは私の騎士よ?盗賊などに負けるような男では……」
負けるような男では無いと言いかけた時、騎士団の一人が会場に飛び込んで来た。
「国王陛下に申し上げます!」
"あんなにボロボロだわ"
"あれでは宮の方も……"
"しっ、A様もいらっしゃるわよ"
貴族達の声が聞こえる。
「静粛に!」
お父様のその一声で会場が静まった。
「宮の状況は?」
「っ……侍女達はみな無事でございます……しかし、A様の騎士、フィリップ伯爵は……」
「……どうしたの?」
「___お亡くなりになられました」
「っ嘘……」
力が抜けて、座り込んでしまった所をティモシーに支えられる。
「お姉様……」
「……大丈夫。大丈夫よバトラ」
「A。今日はここに泊まりなさい」
お父様にそう命令される。
「承知致しました。陛下のご配慮に感謝致します」
「本日のパーティはこれで終いだ!皆退出しろ!」
そう言って席を立ったお父様に続いてジェシカ___ジェシーも私を心配しながらも会場を後にした。
「お姉様……その……」
「バトラ、貴方も自分の宮に帰りなさい?貴方と私の宮は反対にあるから、きっと盗賊も来ないわ」
私に何と声をかけたらいいのか悩んでいる途中のバトラを帰らせて、私は会場の隅に置いてあるソファへ身を預けた。
「A様」
ティモシーが気を遣いながらも話し出した。
私は返事が出来ないまま、ティモシーの話を聞いた。
「……一応、俺はアイツの弟っていう事になってるから今日から三日休む。その間、A様は部屋から出ないで欲しい」
この国は親族が亡くなったらしばらく仕事を休んで亡者を偲ぶという風習がある。
休む期間は人によって違うが、一般的には一週間から三ヶ月程で、ティモシーの言った三日はとても短い。
「三週間、休みなさい」
「A様……」
「私もその間カウィを偲ぶわ。……安心して?仇なんて取ろうと思っていないから」
「いや、三日で戻ってくる」
「やめなさい。貴方はこれから私の専属騎士として一生を誓ってもらうのよ?それなのに三日しか休みを与えないなんて、王族の名に泥を塗ってしまうわ」
「……分かった」
「達者でね。カウィによろしく伝えて」
葬式は、家族のみで派手に行われるのだ。
会場を後にするティモシーの後ろ姿を、私はずっと眺めていた。
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