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「A……すごく、綺麗だ」
華やかな正装に身を包み、私の部屋まで迎えに来てくれたカリムに、目を輝かせながらそう言われる。
「えぇ、ありがとう。 貴方も随分と雰囲気が違うわね」
「……正直、ちょっと息苦しい」
いたずらっ子のような顔でそう言われ、少し拍子抜けをしてしまった。
アジーム家なら、正装をする事なんてそう少なくない筈なのに……
「……ま、でもジェシカ様の為なら我慢出来るな!」
そう、今日は我が熱砂の国の第三王女、ジェシカの六回目の誕生祭なのだ。
「私は、バトラの様子を見るのに精一杯よ。 ……全く、今日はジェシカが主役なのにね。 困った妹よ」
私のその言葉に拍子抜けした表情を浮かべた後、直ぐにニンマリと笑ったカリム。
「でも、愛おしくて堪らないって顔してるぜ?」
「……だって、どんな子であろうとも私の妹には変わりないもの」
折角探してきた教育係を突っぱねられても、私の誕生祭の時、主役である私と同じ色のドレスを着て来ても、可愛い妹である事は揺るぎない事実なのだ。
「……まぁ、少しは落ち着いて欲しいけれどね」
「だな。 ……そろそろ時間だ! ___お手をどうぞ、第一王女A様」
「えぇ、ありがとうカリム」
仰々しく手を差し出したカリムに少し微笑みながら、自分の手を預けた。
「馬車の中でジャミルが待ってくれてる、今日はカウィが来るのか?」
外に向かいながら、カリムがそう尋ねてきた。
「いいえ、今日はティモシーを連れて行くわ。 もう外で待ってるはずよ」
「そうか! 確か、カウィの家に養子に入ったんだったな?」
「えぇ、ティモシー・ラジャーからティモシー・ラジャー・フィリップに名前が変わったわ。 ……と言っても、本人はサインが面倒くさくなったとしか考えていないようだけどね」
困った風にそう言うと、カリムは笑いながら
「確かに、ティモシーは今まで字も書いたことがなかったもんな! いきなり名前が増えるのも大変だなぁ!」
と、言っていた。
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