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そうして、カリムは帰っていった。
｢姫様、そろそろ寝る時間ですよ｣
ヤシュムが私の部屋に入って、ベットサイドのロウソクを消した。
部屋の中は月明かりで照らされている。
チュンチュンと飼っている小鳥が鳴いている声が部屋に響く。
｢ねぇ、ヤシュム｣
部屋から下がろうとしていたヤシュムを呼び止めた。
｢なんです、姫様｣
ベッドに寝ている私の傍に来てくれたヤシュムに話しかける。
｢お腹の子は、元気な男の子がいいわね……｣
私のその言葉にハッとした表情を浮かべたヤシュムは私の顔にかかっている前髪を避けて、
｢国民全員がそれを願っておりますわ。
でも、私の一番の願いは姫様が立派な女性になる事です｣
と、言った。
｢ありがとう……｣
｢私がおそばに居られるのは長くてもあと数年…… その間に、姫様を守れるような騎士を用意しなければいけませんね……｣
｢私、ヤシュムがいてくれればそれでいいわ｣
｢それではいけないのです｣
困ったように笑いながら、そう言ったヤシュムは、私に布団をかけて下がった。
＿＿＿それから数日後。
熱砂の国に第三王女が誕生した。
｢第一王女、A｣
｢はい｣
王であるお父様に名前を呼ばれ、前に出る。
"いつ見ても笑わない姫ね"
"しょうがないわよ、第二王女のバトラ様に人気が集中しているもの"
"あら？ でも、その人気は周りの下級貴族からだけだと聞きましたわよ？"
"私もそう聞きましたわ、王からの支持はA様の方がある、と"
どこかの夫人や令嬢の噂話を聞き流しながら、王の次の言葉を待つ。
｢第一王女Aに、婚約者をつけることになった。
我が国の貴族でも、商人でも良い。 王族にとって有効な縁を結びなさい｣
"ねぇ、それって……？"
"皇太子候補から下ろすって事……？"
"って事は、第二王女か第三王女が皇太子になるって事……？"
｢承知致しました｣
｢あぁ、今日から本格的に婚約者候補と会いなさい｣
｢はい｣
"第一王女は用済みって事？"
"まさか！ 私達にとってはこれからよ！"
"うちの息子、第一王女と同い年よ"
あぁ、これから獣のような目でご子息を紹介されるのかしらね……
皇太子候補から外された事よりも、これから始まる婚約者探しに尽力する事の方がショックだった。
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