if...-2014- 〜広島作品〜7 完結

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右手があったかい。


ひさしぶりにこんなに寝た気がする。


重い目を開くと見覚えのない天井と、パリパリしたシーツの感触。


千葉｢起きた？｣


暖かい手の先を辿るとチーちゃんの顔。


今がどういう状況だったのか思い出せない。


A｢起きたぁー……｣


うーんと手を伸ばすと突っ張る感じがあった。


チューブが視界に入る。


A｢えっ……｣


点滴……注射じゃん！


そうだ、岳たちと話しててなんか眩暈がして倒れちゃったんだ。


気づいたら痛くなっきた、早く外してほし……


千葉｢思ってること全部顔に出てる｣


チーちゃんは笑いながら握っていた手を離した。


千葉｢大丈夫、もう10分くらいで外れるよ。点滴終わったら帰っていいって｣


A｢岳と和也は……？｣


千葉｢飲み物買……｣


チーちゃんが言い終わる前にドアの向こうから足音が聞こえてきた。


ガラガラとドアが引かれる音とコンビニ袋の擦れる音、それから3人の低く落とした話し声。


すぐに目が合うと和也が駆け寄ってくる。


和也｢Aちゃん！｣


駿｢目覚めた？調子どう？｣


A｢駿も来てくれたんだ｣


駿｢おうちには大丈夫って連絡しといたけんね。おばちゃんもコーチも飛んできそうだったけん｣


A｢ありがとう｣


いっぱい寝てたのかな、すごく頭がすっきりしてる。


でも目が覚めるとなんだかごちゃごちゃの現実世界が待っている。


和也｢ごめんね、疲れてたのに無理やり聞き出そうとして｣


A｢疲れてた自覚なかったよー……｣


それより早く点滴終わらないかな。


抜く時やだな……


岳人｢……じゃ、全員出て｣


岳がそう言うと薬を飲まされるんだと分かった。


嫌だって顔に出ちゃったせいで和也が不審そうに岳を見る。


和也｢俺残る｣


岳人｢お前は帰りAの隣で枕係の方が良くない？｣


和也｢だね！わかった！了解！｣


うまく和也をコントロールする岳を見てチーちゃんも駿も笑う。


チーちゃんが和也の肩を組んで廊下に出ると、駿も後を追いかけた。


A｢何個？｣


岳人｢1錠だけ｣


用意された小さな椅子に座る岳。


薬を飲まされる気配はまだない。


A｢飲まなくていいの？｣


体を起こして俯く岳の顔を覗き込んだ。


A｢……何で泣くの(笑)｣


岳人｢泣いとらんわ｣


A｢泣いとるよ、どしたん？｣


岳は笑って薬の用意を始めた。

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