if... 2013 〜広島V2記念作品〜 6

45 chiba side ページ45

トシ、頭おかしくなったんかな？


弱みでも握られてんの？


この場にはAを慰めることができる奴らが沢山いる。


それを思うと、俺は今すぐトシを追いかけてその謎を突き止めるのが賢明なのかな。


洋次郎にしがみついて泣きじゃくるAから目が離せない。


A｢……ごめん、ごめんね……｣


洋次郎｢大丈夫｣


何の謝罪で、洋次郎が何を大丈夫だと言ったのか、曜一朗にはきっと分からないだろう。


洋次郎の淡くも深い恋心とAの残酷な優しさは、2人の思いやりでギリギリのバランスを保ってる。


陽介｢……A、ホテルどこ？｣


A｢……っ｣


しゃくり上げて声が出ないAに代わって、洋次郎が応える。


洋次郎｢航平たちがとってくれたとこ。みんな一緒だと思うよ｣


曜一朗｢ホテル？｣


洋次郎｢遅くなって大人数で寮戻ったら寮長大変じゃけーって、俺らにも航平が用意してくれたんよ｣


槙野｢じゃあ、ホテル集合な｣


槙野がAの背中に手を当てると、Aは赤い目を槙野に向けた。


陽介｢頼むで｣


洋次郎｢うん｣


陽介と槙野がトシの後を追いかけると、Aは気まずそうに洋次郎から手を離す。


A｢……3次会……｣


曜一朗｢そんな場合ちゃうやろ。蛍達には適当に言って遊んどってもらうから｣


A｢ごめん……｣


曜一朗｢謝らんといてや｣


曜一朗の手が、恐る恐るAに伸びた。


ぎこちなくAを慰めるその手には、優しさが表れている。


良太｢旧抱っこ係出番？｣


Aはチラリとこちらを見た。


良太｢何回青ちゃんに傷つけられるんかね｣


Aを抱き上げた良太は嬉しそうだ。


Aは俺にだけ見えるように人差し指を口に当てた。


もう良太だけがAをあやせるわけじゃない。


でもそれは内緒にしたいらしい。


Aは良太の、いや、良太たちの寂しさや戸惑いを理解してるんだろう。


甘えることで支え合ってる、なんて言ってたけど、まさにこのことだったんだ。


こんな時なのに、Aは優しい。

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