if... 2013 〜広島V2記念作品〜 6

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……トシくん？


航平のフランクなスピーチが終わって店内が拍手に包まれる中、この子は確かにそう言った。


｢こんにちは｣


A｢こんにちは……｣


付き合ってからもずっと青ちゃんって呼んでた自分が恥ずかしくなった。


この人は笑ったら幼い感じなのに、ドレスを着こなす綺麗な体のラインはすごく色っぽい。


自分が惨めで……


｢洋次郎くんたちも呼んでこよっか？｣


青山｢好きにしていーよ｣


もしかして、いやもしかしなくても青ちゃんの好きな人ってこの人なのかな？


｢わかった！呼んでくるね！｣


やだ、一緒にいたくない。


チーちゃん……


千葉｢モテ男来ちゃったから椅子足りないじゃーん！｣


全て察したかのようにタイミングよく、チーちゃんが席を立った。


千葉｢良太んとこでも行ってみる？｣


A｢う、うん！｣


岳人｢てか、Aかと思った｣


拓磨｢俺も。声そっくり｣


A｢嘘？私あんな声してる？｣


拓磨｢そっくりだった！雰囲気も似てたし！｣


千葉｢全然違うよ。Aのが可愛いよな？｣


青山｢うん｣


うんじゃないよ、もうやめてよ……。


岳人｢……A、俺拓実と話してくるけんついて来て｣


A｢え？｣


岳と拓実は確かに世代別代表で仲良くなってるみたいだけど、なんで急に……


岳人｢女ばっかで行きにくい｣


あぁ、そういうことね……


半ば強引に手をひかれると、チーちゃんが優しく笑う。


千葉｢10分したら取り返しに行くよ！｣


無言で岳が向かう先は、拓実がいるのとは別方向。


人気のない喫煙スペースの側で立ち止まった岳は、大きなため息をついた。


A｢岳？｣


岳人｢泣きそうだったけん……航平くんたちにそーゆーとこ見られたくないかと思って｣


A｢岳……｣


その気持ちと岳人の成長の方が泣けそうだ。


岳人｢青くんと一緒におらんとって｣


優しい声で心配してくれる岳人を見ると、頷けずにはいられなかった。


A｢うん。今日は岳と一緒にいる！｣


岳人｢はぁ？ちょーしのんな！｣


A｢えへへ、照れてる｣


岳人｢照れんわ！つかまじで拓実んとこ行くけん！千葉くんのとこまで送る！｣


A｢うん！ありがとう！｣


テーブルに戻った岳人は痛いくらいしっかり手をつないでいた手をほどく。


それから青ちゃんに見せつけるかのように、チーちゃんと私の手を結び直した。

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