if... 2013 〜広島V2記念作品〜 6

20 chiba side ページ20

森脇さんやプロデューサーさんたちと別れて、やっと抜け出せた帰り道。


森脇さんもすっかり飲んじゃって、結局俺達はタクって寮まで戻るように言われた。


なかなかタクシーが捕まらない中、携帯を見る洋次郎が残念そうに呟く。


洋次郎｢あー、淳矢帰っちゃったって｣


千葉｢A？｣


洋次郎｢いや、淳矢。千葉ちゃんにも来てない？｣


携帯を見るとメールが2通来ていた。


千葉｢俺、Aからも来てるもんねーっ｣


得意気に洋次郎の顔の前で携帯を振った。


洋次郎｢……Aじゃないですよ、それ(笑)｣


千葉｢嘘じゃねーから！ちゃんと見……｣


洋次郎｢Aは滅多に一斉送信なんかしないです｣


千葉｢え？｣


宛先をよく見ると、岳人のアドレスも入っていた。


洋次郎｢連絡事項とか急ぎの件以外は1人ずつ送るんですよ。メール好きだから｣


千葉｢メール好きなの？｣


洋次郎｢好きっすよ。でも長く続くと、飽きちゃって返事返ってこんくなります(笑)｣


嬉しそうにAの話をする洋次郎に見とれて、せっかく通ったタクシーを逃す。


洋次郎｢これタクシー会社電話した方が早いっすね｣


千葉｢じゃぁ俺かける……って電池ないわ｣


洋次郎｢俺かけます｣


このメールがAじゃないってことは犯人は1人しかいない。


ゆっくりってことは、トシまさか淳矢が帰ってからも……


千葉｢痛！？｣


ものすごいスピードで走ってきた若者とぶつかると、そいつは慌てて振り返った。


岳人｢すいません！｣


千葉｢……岳か？｣


岳人｢千葉くん！？すいません、車乗せてください！すぐ寮に向かって！｣


ちょうど電話を終えた洋次郎も岳人に気付く。


洋次郎｢俺ら飲んどるんよ。今タクシー呼んだけん、一緒に乗って帰ろ｣


岳人｢すぐ来ますか！？｣


千葉｢さっきのメール？｣


岳人は握った携帯を見て、心配そうに画面をなでた。


岳人｢……Aはこんな下品な言葉使わないんで！……悪い予感しかせんくて｣


岳人もAのメールじゃないって気付いたんだ。


悔しい。


千葉｢……すぐ来るでしょ｣


あいつらが寮にいるとは限らないけど。


岳人｢2人とも携帯出ないんですよ……｣


心配そうな岳人の顔を見て、洋次郎だけが優しく微笑んでいた。

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