if... 2013 〜広島V2記念作品〜 6

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ピッチに入れば試合に集中できる。


でも、外から見ているのは本当にキツいんだ。


それは去年の累積で出られなかった最終節で身を持って実感していた。


優勝が決まった瞬間、Aはふにゃふにゃにヘタレ込んだ。


Aの肩の荷がひとつ降りたんだと思うと、安心した。


俺が知ってるだけでもいろんなことが重なって、今シーズンのAはギリギリだった。


千葉｢A……｣


トモ｢千葉ちゃん｣


Aのところに行こうとして、トモに飛び乗られる。


邪魔しようとしてるわけじゃなさそうだ。


トモ｢ありがと｣


トモと周が泣いているのを見て、2人がここを離れる覚悟をしてるんだと気付く。


鹿島スタジアムの一角で、小さな紫色が集まって大きく揺れるのが見えた。


周やトモに目をやったそばから、みんなも悟ったかのように泣き出した。


このメンバーでできる最後のリーグ戦だった。


最高の形で終われたのに、最高に寂しかった。


別れがあるのは当然なのにね。


前節までは横浜が1位だったから、シャーレもここには届いていない。


ホームで優勝した時ほど、感情も表に出せない。


それでも……なんでも良かった。


勝った。


歓声と包容の渦巻くピッチからは、Aの姿が確認できなくなった。


Aならきっと同じ気持ちを共有できる。


早くこの寂しさを、分かち合いたい。


洋次郎｢ロッカールームで騒げばいいよね｣


場内を周りながら洋次郎が呟いた。


千葉｢アウェーだもんな｣


セレモニーが終わってロッカールームに戻っても、Aの姿は見えなかった。


トモ｢勝ったら泣かない宣言しちゃったから、出てこれないんじゃないの？｣


青山｢ほっときゃ帰ってくるよ。また特番のオファーの電話対応でしょ｣


ロッカールームの色んな箇所から、似たような着信音が響いている。


俺の携帯も例外じゃないけど、"おめでとう"の言葉は1番にAから聞きたい。


洋次郎｢みんなで撮ろうよ！｣


青山｢ナカジさん真ん中ね！｣


航平｢よっしゃ、チャンピオンボード持って！｣


楽しそうにするみんなを見て輪に入っても、やっぱり足りない。


千葉｢……俺、やっぱA探してくる！｣


まだ撮影会を続ける皆を尻目に、ロッカールームを飛び出した。

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