DeFender 3

13 ページ13

篤人を送り出すとき、にこにこする顔を抑えるのに必死だった。


マキ、早く来ないかな。


手元の携帯が一瞬震えると、すぐに指をスライドさせる。


A「マキ！」


槙野『早っ！着いたで！出てきんちゃい！』


鍵をかけようとして、4本の鍵に戸惑う。


2つ目に選んだ鍵がぴったりはまってドアに鍵がかかると、急いでマキの車に飛び乗った。


槙野「そんな慌てんでも余裕で間に合うけん！」


A「席なくならない？」


槙野「指定じゃけん、大丈夫よ。ウッチーにバレんかった？」


A「うん！」


槙野「あーあ。今週のご主人サマに嘘ついて……いけん子じゃのー？」


A「嘘じゃないよ」


マキが車を走らせて向かう先は、篤人の試合会場。


マキを誘ったらサプライズで行こうって言ってくれて、チケットまで用意してくれた。


やっと約束の篤人の写真が撮れるんだ。


槙野「ちゃんとピッチの近くにしたけんね」


会場に着くと、マキが手を引いて席まで導いてくれる。


A「……すごい人……」


槙野「怖い？」


ぐっと手を引き寄せられて、マキの胸にぶつかった。


A「……大丈夫」


槙野「俺ずっと離さんけん、大丈夫よ。トイレまでついてくけんね？」


A「いい」


槙野「(笑)」


マキが人ごみを掻き分けて着いた席は、ピッチに手が届きそうなくらい近くの席だった。


でも、誰も座ってない。


まだ試合は始まってないのに、みんな立ち上がって歌を歌ってる。


A「マキ……」


槙野「座ろーや？別にウッチーの応援しに来た訳じゃないし(笑)」


A「うん……」


槙野「座るの怖い？膝来る？」


A「うん」


槙野「え！？」


A「……？」


みんなが当たり前のように歌う歌を私は知らなくて、みんなが当たり前のように立っている中、私は腰が引けて……


槙野「じゃーこーしよ？」


マキは私をベンチに座らせると、ピッタリ並んで隣に座った。


槙野「ここで膝はまずいけん、これで我慢してや」


マキの手が腰に回って、ぐっと引き寄せてくれる。


マキの肩にもたれかかって、ダウンを両手で握りしめた。


マキがいてくれてよかった。


篤人の言うとおり、1人じゃ絶対無理だ。

14 makino side→←12 atsuto side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す