雲が聴くのは月の歌 part９

そばにいて欲しいだけ ページ37

僕は憎い。


マフィアが、この世界が。



醜く汚いこの世界の中で、僕は苦しみ生きて来た。




永遠の輪廻の果てを彷徨う中、僕はAに出会った。



真っ暗な世界に突如として現れた光り輝く穢れ無き姿は、
夜空に輝く綺麗な月と同じ。




美しくて、儚い。


誰の手も届く事無く、穢れない永遠の美。



僕は一瞬で心奪われた。



自分の物にならなくてもいい。



ただ、僕は穢れ無く純粋で美しいAのそばに居たかった。



Aのそばでずっと、美しいAを見て居たかった。



それなのに。




Aは突如として姿を消した。





僕の暗闇に包まれた世界から唯一の光を、希望を、Aを、
奪ったのは僕が嫌いなマフィアだった。




憎い。



憎い・・・憎い・・・・。



僕はマフィアが憎い。





　骸「・・・・A・・。」



　 「っ！！」





僕が名前を呼んでAに手を伸ばすと、Aは
怯え震えだす。




それでも床に倒れる男を守ろうと僕の前に立ちふさがる。



Aの瞳に僕が写っている。


Aは僕に怯えていた。




僕はAに危害を加えるようなマフィアでは無い。




ただ純粋にAを愛し、Aのそばに居たいだけ。



しかし、




Aの目には涙が溜まり僕を見つめるその瞳には恐怖の
色が浮かぶ。






　骸「・・・・。」




僕はそんなAを見て、伸ばしていた手を下す。




僕を・・・



マフィアと一緒にしないでください・・・。





恐怖で怯え、絶望に満ちたその瞳で僕を見ないで欲しかった。





僕はAをマフィアから守りたいだけ。


純粋で美しいAに穢れて欲しくないだけ。




　 「・・・・。」



　骸「・・・・。」





桜が舞い散るその部屋で、僕を見つめるAの瞳から
真っ赤に染まった穢れた床に、小さな雫が零れ落ちた。

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