機関の入隊 ページ2
忘れていた記憶がビデオの早送りのように、フラッシュバックして次々と頭の中に映像が巡る。
私は目を開け、顔を上げた。
伸ばされた女の手を私は振り払う。
女は目を細めて、黙って此方を見つめる。
「思い出した……最近、私を尾行していた人たちでしょ?」
私は鋭い目つきを女に向けて言い放った。
女は胸ポケットから手を離し、「ええ‥」と言って私から一歩離れる。
「どうやら記憶が戻ったようね」
(わざとか…)
「どうして私のことを調べるの?」
女は足を止めて、此方を振り返った。
「あなたをスカウトするためよ」
「スカウト?」
私は眉を顰めて女の言ったことを繰り返した。
女は冷静な表情のまま頷く。
「ええ、あなたのことは調べたから分かってたけど、本性を知りたくて私の部下に尾けさせたの」
「それじゃあ合格か、私‥」
「それで返信は?」
私は一息ついてから、「分かった、受ける」と返事をする。
女はまた前を向き直して、「ついてきなさい」とだけ言って白い扉の向こうに行った。
私も白い扉の通りぬけると、六畳くらいの会議室のような部屋に出た。私は驚いて唖然と突っ立て見てると、扉が自然と消えていた。
女は平然とした様子で椅子に座ると、「そこに座りなさい」と言って言う通りに座った。
「まずあなたの偽名を決めましょう」
私は真剣な表情で女を見る。
「あなたはどんな名前なんです?」
「"エミカ"よ」
「エミカさんですか‥‥」
名前を悩んでいると、真剣な表情でエミカさんは口を開いた。
「呼び方には注意しなさい。
外で呼ぶときは、必ず呼び捨てにしないと呼び方で身分がバレるわ」
私は「はい、気を付けます」と、頷いた。
そして、考えた挙句に名前を決めた。
「"ミク"にします!」
「いいわね‥ふふっ」
エミカさんは、そう聞いて笑った。
「それじゃあここのことについて、簡単に説明するわね‥‥通称"調和"。
世界政府の裏での監視をする秘密機関よ。
主任務は、暗殺や情報収集や監視。
存在しない組織であり、メンバーは存在しないとされる者もいるわ」
「あ、あの…もしかして私もそうなるんですか?」
「いや‥今まで一般人として暮らし、家族もいるならそのままでいた方がいいわ。
ただし例外もあるから、そのときは頼んだわ」
最後の言葉でエミカさんは真剣な表情でそう言った。
話はそれで終わり、帰りは車で家まで送ってもらった。
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作者名:マヤさん | 作成日時:2023年6月12日 9時