す ページ1
記憶がない…
目が覚めた瞬間、心の中でぼんやりと思った。
周囲の景色が明瞭になって、薄闇に気づく。
天井に埋め込まれた発光ダイオードがチカチカと点滅している。
(ここは‥どこ?
なんで私、いるんだろう?)
記憶を遡るが思い出せない。
床から起き上がり、周囲を見渡した。
目にした光景に背筋が凍るような感覚が走った。
ドアや窓はおろか、人が出入りできるようなところが見当たらない。
無機質なコンクリート壁が取り囲む、閉ざされた空間。
「閉じ込められた‥」
そう言った直後、一つの疑問が浮かんだ。
(どうやってここに連れてきたんだろう?)
キィッ……
背後から扉を開く音がして、反射的に後ろを振り返った。
そこには、さっきまでなかった白い扉が出現していた。中から平然と現れた黒スーツの女。
警戒してゆっくりと後退りをする。
「あなた、誰‥?」
「私はエミカ、あなたを迎えに来たわ。
ついてきて‥」
それだけ言うと返事を待たずに、扉を開けたままで先に女は行ってしまった。
私は女の後に続いて足を踏み入れた。
キィッ‥バタンッ
入った瞬間、背後で扉が閉まる。
出た先は、会議室のような机と椅子しかない部屋。
デスク椅子に座る女は私の疑問を見透かしたかのように説明する。
「ここは我々の拠点の会議室よ‥そこに座って」
そう言うと、手で隣の席に座るように促す。
私はその通りに座り、女の方に顔を向ける。
「ところで、どうして記憶喪失なのかしら?」
私を見据えて言うと一瞬、空気がピリついた。
「さっきから我々のことを明らかに探っているわね」
そこまで聞いて、私は顔を下げて静かに目を閉じた。
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作者名:マヤさん | 作成日時:2023年6月12日 9時