斎のカーディガンがピンクな理由。�� ページ13
「…………………いから」
「え？」
やっとぼそっと呟いたけれど、声が小さすぎて聞こえない。
聞き返すと椎名センセは、酷く言いづらそうに繰り返した。
「斎は、可愛いから。アイボリーよりもっと…ピンクとか、そういう色が似合うと、思ったから」
――――――――一瞬、センセが何を言ってるのかわからなかった。
数学の授業中もわかんないことはあるけど、むしろわかんないことだらけだけど、そんなんじゃなくてもう脳が理解を拒否してるような、日本語じゃない言語で話されてるような。
衝撃に固まるつきの耳に、弾けるような笑い声が届いた。
「っははは！おっかしーの、斎わかってなかったんだ？あはははもーだめ、腹筋が死ぬー！」
「笑っちゃだめだって！斎は自覚ないんだからアヒャヒャヒャヒャヒャ」
「ほんとに気づいてなかったのかよ…鈍感もここまで来るとただのバカだな」
お腹抱えて笑い転げるりょーくんといおーな、いっそあきれ果てたような顔してるまーちゃん。
３人の様子からして、みんなセンセがこう言うってことわかってたみたいだ。
「鈍感って…わかるわけないじゃん！大体つき、可愛くなんかないし！」
本心からそう叫ぶ。
だってつきは…確かにちっちゃい頃から「可愛い子ね」とか言われることはあったけど、それってただのお父さんやお母さんへの社交辞令だしつきほんとに可愛くなんかないし！
「いやいや、斎はましな方だって。ブスではないよ」
「そうだよ！斎ちゃんと鏡見たことある？」
「こいつ本気でわかんないって顔してるぞ」
いや、本当にわかんないってば。
みんなつきをおだてて何がしたいんだろう…？
「可愛いっていうのは、工藤さんみたいな人のことだよ…？」
クラス１の美人の名前を挙げて、ちょっとだけ反論してみる。
すると、全員が「コイツバカか」って顔をした。.......椎名センセも含めて。
「僕はよくわかんないけど斎のこと可愛いって言ってる奴らは結構多いよ…」
りょーくんの言葉にみんな頷く。わけわかんない。
「だからな、斎はアイボリーよりもピンクみたいな色のほうが似合うって椎名先生は言ってるんだ」
まーちゃんが完結させるように言った。
まだわかんない・・・・・。
つきの脳内では、さっきセンセが言った「斎は可愛いから」って一言がぐるぐる廻っていた。
「―――斎」
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