斎のカーディガンがピンクな理由。 ページ12
もう学校に行かなくちゃいけない時間だ。
今日も変わらず、クローゼットを開けて中の制服を取り出す。
チェックのスカート、黒いブレザー、白のブラウス、紺のソックス、そして。
女の子らしいピンク色の、カーディガン。
他にも指定のカーディガンの色はたくさんあるのに、斎がこの色を好む理由。
斎はそれを思い出してひとり笑んだ。
「斎ってさ、なんでそんな地味なの着てんの？」
きっかけは、休み時間に幼馴染たちと教室で話してたときの椎名センセのその一言だった。
入学したてのその頃つきはいつもアイボリーのカーディガンを着ていて、それが椎名センセには「地味」に見えたらしい。
「なんでって…他にもアイボリー着てる子なんていっぱいいるじゃん」
「いや、あのさ…」
椎名センセは言いにくそうに視線を彷徨わせる。
確かに教室内には斎と同じ色のカーディガンを着たクラスメイトなんていっぱいいる。
えっと、その、と意味のない言葉を並べているうちに、休み時間が終わるチャイムが鳴った。
「あー、鳴っちゃった。センセ、帰る前に答え教えてね」
つきは次の時間が技術であることを思い出して、めちゃくちゃ厳しい山谷先生に怒られるのはごめんだとそのまま会話を打ち切って技術室に向かったのだった。
そうして、すべての授業を終えて、ホームルームも終了し。
がやがやと部活や遊びに行くクラスメイトの間を縫うようにして、つきは教壇にたどり着いた。
「しーなせーんせっ」
答え教えてって言ったよね？にっこり笑って迫る。
椎名センセの背後では、バスケ部の助っ人に引っ張られてった遊利と生徒会の仕事がある玲以外の３人がにやにやしながら退路を断っていた。
逃げ場はない。
それを悟った椎名センセはなおもちらちらと逃げ道を探すように辺りを見回し、そして諦めた。
「…わかった、言うから…」
額に手を当て溜息をつく椎名センセに、４人一緒に一歩近づく。
「で、斎がアイボリー着てちゃダメな理由って何？」
「いや誰もダメなんて言ってないけどさ…」
「いいから早く吐け、楽になるぞ」
「意味わかんねーよ…」
わくわく顔のいおーなとまーちゃんがさらに問い詰める。
「その…引くなよ？絶対引くなよ？」
「わかったから早くー」
りょーくんにも急かされてやっと決心がついいたらしい椎名センセは、ゆっくりと口を開いた。
斎のカーディガンがピンクな理由。�□�←にゃあお、にゃあ、みゃあ
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