終天に巡り逢うⅣ (ページ26)

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『…兄さんが羨ましかったよ。妬ましかった。のうのうと過ごしてる兄さんが。自分だけ、大切な仲間を…家族を作る兄さんが…』

Aは感情のない眼差しで俺を見つめてくる。
それはきっと、Aの本音なんだろう。俺はずっと彼女を放置して、自分だけ仲間を作って、その仲間との時間を大切にしていた。喪いたくないと。

『…なのに、兄さんは私を責めたよね』

あの日、親父が処刑された日。俺はAを責めてしまった。親父が殺されたのは、俺のせいだったのに。なのに俺は親父の首を斬り落としたAに酷いことをした。
だから彼女が俺を責めるのも無理はない。Aは何も悪くなかった。全部、俺が弱くて甘かったから…真昼を助けたいと思っていたから。

『父さんの首を落として、どうして私が責められなきゃいけなかったの？だって、私がそれを拒否したら皆が殺されたよね？拒否権なんてないでしょ？なのに私を憎むかのような視線を向けてきた。その原因を作ったのは、兄さんなのに』

「ああ、そうだ」

『父さんを助ける期間は与えられたのに、兄さんは真昼さんを助けたくて、でもあの人は強いから…兄さんは勝てなかった。強いって分かってるのに、生半可な覚悟じゃ何も出来ないって分かってたはずなのに、兄さんは助けようとした。その結果、父さんの処刑が決まったんでしょ？なのにどうして、みんな私を責める視線を向けてきたの？』

「…」

『兄さんがちゃんと、決められなかったから。だからその結果、私の手を汚すことになった。違う？』

淡々と述べるA。その瞳に温度も感情もなく、ただただ俺を見据えているだけだった。

『挙句、兄さんは血の繋がった家族の私を捨てて、血の繋がらない人たちを助けた』

「…何を、知ってる」

『世界崩壊の理由』

馬鹿な。
それは俺と真昼…ほんの一部の奴しか知らないことだ。Aが知っているわけがない。なのに、何故彼女が知っているんだ。どこまで知っている？
口元に笑みを浮かべて、Aは困惑する俺を見据える。

『大切な人たちが死んで…兄さんはそれを認めたくなかった。だから、禁忌に手を出した』

「…何故、知ってる」

『教えると思う？安心しなよ。他の人には言ってないから』

「信じられない」

『はは。酷いなぁ…兄さんは私を信用してないんだ？まぁ…それは私も同じだけど』

ずきりと胸の奥が痛む。

『いつだって、誰も、何も、私は信じてこなかった。ずっと、それが続くと思ってたけど…』